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行政の未来を切り拓く。デジタル庁「AI班」の奮闘に密着

人口減少と少子高齢化によって行政職員の担い手が不足する中、公共サービスを維持・強化するには、政府や地方公共団体での生成AIの積極的な利活用が不可欠です。

デジタル庁では2025年5月、全職員向けの生成AI利用環境(プロジェクト名:「源内」(げんない))を内製開発しました。

源内を通じて利用できるものは、チャット(対話型AI)や文章作成などの汎用AIアプリなどがあります。これに加えて、文化庁やデジタル庁のガイドラインを反映させた文章校正、国会答弁検索AIや公用文チェッカーAI、法制度調査支援AI「Lawsy」(ロージー)などの行政実務に特化したAIアプリもあります。源内と同様に、行政実務用AIアプリも2025年10月現在ではデジタル庁で内製しており、今後も行政実務に特化したAIアプリを追加していく予定です。

デジタル庁ニュースでは、源内の内製開発を担う「AI実装総括班」(AI班)に取材。AIで行政の未来を切り拓こうと奮闘するデジタル庁の職員たちに密着しました。

「源内」とは:行政実務に特化したアプリも提供

デジタル庁AI班が内製開発した生成AI利用環境「源内(げんない)」の利用画面のスクリーンショット。左側に「ホーム」や「チャット」「文章生成」「要約」などのメニューが表示されており、上部に「ユースケースから使う」「ユースケースから作る」というタブが表示されている。画面は「ユースケースから使う」タブが選択されており、「おすすめGovAI(デジタル庁作成AIソリューション)」というタイトルのもと、「国会答弁検索」や「Lawsy」などのメニューが表示されている。
(デジタル庁AI班がAI活用の基盤として内製開発した、生成AI利用環境「源内(げんない)」)

人口減少下の日本において、行政機関の職員数減少への対応が課題となっています。こうした中でも公共サービスを維持、強化していくため、デジタル庁は行政の現場でのAIの活用を推進しています。さらに、行政でのAI活用をモデルケースとして、社会全体にAI活用の機運や知見を広げることを目指しています。

行政の現場で安心・安全にAIを活用するため、デジタル庁では政府全体の基盤となる「ガバメントAI」の整備を進めています。これに係る取組の一部として、デジタル庁AI班が内製開発した職員向け生成AI利用環境が「源内」です。

源内では、膨大な業務マニュアルから回答を導き出すアプリや、過去の国会答弁を検索できるアプリなど、行政実務に特化したAIアプリを20種類以上提供しており、庁内の全職員が利用できます

「生成AI利用環境(源内)で提供されている行政実務AIアプリの一部」というタイトルのスライドのスクリーンショット。  「目的:公開情報を調査したい」という小見出しには、(1)Lawsy(法制度調査支援AI):法制度に関する質問を入力することで、生成AIが法制執務業務支援システム(e-LAWS)と連携して分析レポートを作成、(2)国会答弁を検索する(国会答弁検索AI):国会で問われることを想定した質問を入力することで、国会議事録の公式データベースの中から、その質問に答えている、あるいは答えるのに参考になるような政府答弁を検索し、関連性が高いものから順に表示という提案をしている。  「目的:デジタル庁内部の情報を調査したい」という小見出しには、(1)旅費等内部管理業務共通システム(SEABIS)の使い方を検索する、(2)電子決済システム(EASY)の使い方を検索する、(3)組織内の担当部署を判断する(担務割り当てAI)という提案をしている。  「目的:会議や文書作成を効率的に行いたい」という小見出しには、(1)会議におけるメモ作成、(2)公用文チェッカーAI、(3)Teams会議(Web会議)から議事録を作成する
(「源内」で提供されている行政実務用AIアプリの一部/デジタル庁)

AI班は2025年5月からデジタル庁職員向けに源内の提供を開始し、行政現場での利用状況や課題把握のための検証を進めてきました。こうした検証実績を踏まえ、2026年1月以降は利用を希望する府省庁にも、源内を展開する予定です。

●源内の利用実績をデジタル庁ウェブサイトで掲載しています。以下のリンクをご覧ください。

また、AI班では源内の利用者や源内で提供されているAIアプリの開発者が集うコミュニティを設立しました。2025年10月時点で85人が参加し、AIの活用方法を相談したり、開発に関する知識を共有したりしています。

AI活用の機運づくりから、基盤づくりへ

Lawsyの開発者二人がモニターを見ている写真。モニターには、AIアプリとして源内に導入された「Lawsy」の開発画面が投影されている。
(AIアプリとして源内に導入された「Lawsy」の開発画面がモニターに投影されている)

また、デジタル庁ではAI活用の機運づくりとして、分野横断の「AIアイデアソン・ハッカソン」を開催しています。2024年11月の実施回にはデジタル庁や東京都、都の外郭団体であるGovTech東京や業界トップクラスのAIエンジニア約40名が集まり、行政職員の業務に関する悩みを解決するAIアプリの試作に臨みました。

●デジタル庁ニュースでは、デジタル庁で開催した「AIアイデア・ハッカソン」の様子を伝えています。あわせてご覧ください。

AIアイデアソン・ハッカソンは、官民が共同して行政現場でのAI活用を進める機運づくりのほか、現場のAI活用ニーズやアイデアを実務に反映していくという狙いもあります。

実際に、アイデアソン・ハッカソンで誕生した生成AIアプリの試作品が、源内の行政実務特化アプリとして採用された事例もあります。

デジタル庁は2025年2月から3月にかけて、法制事務の効率化などをテーマにした「法令」×「デジタル」ハッカソンを開催。約130名が参加し、28チームが生成AIアプリの作品を開発しました。最優秀賞を受賞したアプリ作品「Lawsy(ロージー)」は、のちに源内への導入が実現しました。

「Lawsy(ロージー)」は、法令に詳しくない人でも法令の情報を収集し解説を得られる、法令特化型のDeep Researchツールです。法制度に関する質問を入力すると、生成AIがデータベースに格納されているすべての法令を検索し、分析レポートを出力します。

法令情報だけでなく、政策・判例・国会などの関連情報と統合しながら、出力結果の正確性と網羅性を高めています。例えば、財政会計六法から特定の条文を探し出す場合、人間がやろうとすると半日かかりますが、Lawsyなら2分で完了します。

Lawsyの源内への導入実現は、AI活用の機運づくりとして始まった取組が、実際の基盤づくりにつながった好事例と言えるでしょう。

●デジタル庁ニュースでは、「法令」×「デジタル」ハッカソンの様子を伝えています。あわせてご覧ください。

「行政職員全員がAIエンジニア、夢物語ではない」

デジタル庁AI班の大杉直也が着席して話している様子を、向かって左手から撮影した写真。
(デジタル庁AI班の大杉直也)

加速し始めた行政のAI実装について、デジタル庁AI班の大杉直也は以下のように語ります。

「現場の職員が自らAIアプリを開発して、自分の課題を解決できるところまで持っていけたら非常に良いと考えており、そのために今”源内”を整備しています。国家公務員をはじめ、行政職員の全員がAIエンジニアだというのが理想の世界だと思っていますし、それは必ずしも夢物語ではないと感じながら仕事をしています」(大杉)

以下の動画では、AI班の日々の奮闘を密着取材しました。ぜひご覧ください。

動画の内容をテキストで読む

●関連情報は、以下のリンクをご覧ください。

●デジタル庁ニュースでは、AIに関連する記事を掲載しています。以下のリンクをご覧ください。

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