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官民連携でイノベーションを!「法令」×「デジタル」ハッカソン

複数のAIと議論しながら法律文書を作るソフトに、相談内容のメモから法令を検索してくれるAIも――。

2025年3月、都内では「法令」と「デジタル」を掛け合わせた新たなサービスが開発・発表されていました。

年齢や業種を超えたチームがアイデアをぶつけ合った「法令」×「デジタル」ハッカソンの様子を取材しました。

官民連携でイノベーションの創出へ…デジタル庁が取り組むアイデアソン・ハッカソン

(「法令」×「デジタル」ハッカソンの様子)

これからの人口減少社会で行政職員の担い手不足が懸念される中、デジタル庁では行政サービスの維持・向上の取組の一つとして、生成AIやデジタル技術を活用した行政業務の効率化の実証を進めています。

これまでデジタル庁では、地方自治体や民間の方々と連携し、生成AI等を用いて行政業務の課題を解決していこうと、過去2回にわたってイベントを催してきました。

第3回となる今回は、法令データを使用したサービスの創出をテーマとしたハッカソンを開催しました。

法令とは、「法律」を含む社会のルールです。法令には、「法律」以外に「政令」「省令」等いくつかの種類があり、いずれも経済活動や国民の権利・義務に関係し、社会を動かし、維持するための重要な基盤です。

しかしながら、行政職員が法令を編集したり、管理したりする「法制事務」のワークフローには、紙の時代の慣習を色濃く残しています。そのため、デジタル技術が十分に活用できず、職員の負担にもつながっています。

そこでデジタル庁では、信頼できる最新の法令情報を、だれもが、どこでも、タイムリーに入手できるようにするため、法令のデータベース「e-Gov法令検索」を提供しています。また、「e-Gov法令検索」に格納されている法律や政省令等のデータといった「法令データ」と、それを広く再利用できるようにするための「法令API」を提供しています。

法令APIには、法制事務の効率化や法令案・政策を立案する際に応用できることが期待されています。

具体的には、国家公務員の働き方改善や法案の誤り防止などに役立てるため、デジタル技術を法令の編集やチェックに活用するための取組を進めています。法令APIを生成AIと組み合わせることで法制事務の作業を補助する実験も実施しています。

(「法令」×「デジタル」の取組を説明するデジタル庁企画官の中野)

法令は民間企業のビジネスとも密接に関わっています。一方で、法令には膨大な数があり、それらを理解するには専門知識が求められます。また、法令は改正されることもしばしばあり、最新の条文を閲覧できるよう、内容を常に更新し続ける必要があります。

こうした課題に対してデジタル庁では、法令APIを活用することで、「e-Gov法令検索」では対応が難しいような専門分野に対応したサービスや、社会的発見をもたらすデータ分析サービス、一般の方向けにデータを加工して提供するサービス等の開発が可能となると考えています。

平将明デジタル大臣は、今回のハッカソンの挨拶の中で、「法令」をテーマとして取り上げる意義について、以下のように話しました。

「霞が関は(法令の扱い)にリソースを割いているところです。また、間違いがあってはいけない世界であります。精緻な仕事が問われるわけでありますが、この分野でAIまたはデジタルの実装をデジタル庁が先頭に立ってやっていきたいと思います」

(平将明デジタル大臣)

130名超の参加者が1か月で開発に挑む。最優秀賞は・・・

(2025年3月、ハッカソン最終審査の様子)

今回のハッカソンに集まったのは、エンジニア、弁護士、公務員、学生など130名を超の参加者。法令データとAI等の技術を用いて、法制事務の効率化や新たなビジネス創出を目指すサービスを考えました。

開発期間は1か月。最終日に実施された審査会には、起業家でAIエンジニアの安野貴博氏(合同会社機械経営代表)、こども家庭庁で法令審査の業務を担当する本田深青氏(こども家庭庁長官官房総務課法令審査係長)、リーガルテック企業を経営する八木田樹氏(株式会社Legalscape代表取締役・最高経営責任者)が審査員として参加しました。

AIの活用方法も多岐にわたる中、最優秀賞に選ばれたのは「Lawsy(ロージー)」でした。法令に詳しくない人であっても、調べたい法令や関連法令の情報・解説を得られるツールです。

(最優秀賞「Lawsy」の説明画面)

サービスを紹介するプレゼン動画では、Lawsyに「AIで遠隔医療サポート。症状の提案は医療行為?」という質問を入力すると、質問に関連した法令の適用範囲・課題・対策などの整理されたレポートが自動で生成される様子が映し出されました。

このアイデアについて、審査員の安野さんも高く評価。以下のように語りました。

「マインドマップみたいな形で、分かりやすく全体像を提示するというところがあり、いろいろ工夫されていると思いました。オープンソース化されており、完成度も高く、素晴らしい。いいプロジェクトだなと思いました」

(安野貴博氏)

「Lawsy」の開発チームメンバーは喜びを語るとともに、ハッカソンを通したコミュニティの今後の発展に期待を寄せています。

「今回のようなハッカソンで、内部のドメインを持っている方と外部の技術者がちゃんと繋がることで、今後アイデアソン・ハッカソンのコミュニティが発展していけばいいなと考えています」

(最優秀賞を受賞したチーム「Lawsy」)

一方で、受賞に至らなかった参加者も、ハッカソンでポジティブな影響を受けたと明かしてくれました。

「今日の発表を見て、コードを作れない人でもアイデア次第で色々なチャンスがあると思いました。ハッカソンを通じて熱が入ったというか、すごく良い機会になったなと思っています」

「このハッカソンの中から、実際に実用化されて(業務改善や新たなビジネスで)運用されていくような未来が進んだら良いなと、心から思っています」

審査を見届けた平大臣は、政府におけるAIの活用促進に向けて意気込みを語りました。

「“このアイデアと、あのアイデアを組み合わせるとさらに良くなりそう”というものも、沢山ありました。データやAIをフルに活用し、今後も行政業務の効率を高めていくということに取り組んでいきたいと思っています」

官民が連携したイノベーションの創出へ。引き続き、デジタル庁ではアイデアソン・ハッカソンを開催していきます。

「法令」×「デジタル」ハッカソンの模様は以下の動画でもご紹介しています。ぜひご覧ください。。

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