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行政改革はユーザー視点で サービスデザインで行政官のマインドを変える デジタル庁 企画官 外山 雅暁

行政サービスの利用者やシステムの利用者である省庁や地方公共団体にとって、より良い行政DXとは何か。

これまで、行政サービスへのユーザー視点の導入に取り組んできたデジタル庁 企画官の外山 雅暁が、「行政×サービスデザイン」の意義について語りました。

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人は誰でもアーティストである

――行政で働くことを考えた経緯は?

外山 美術大学を卒業後、最初はアーティストとして活動していました。その活動の中で町おこしをお手伝いさせていただく機会があり、アーティストやNPO、町の人々が一緒になって成果を上げることができました。

他方、個々の活動だけでは継続性がなく、行政という大きな力と一緒になることで、そういった活動が継続的に大きくなっていくと感じました。そこで、行政機関に入りそのノウハウを身に着けることで活動が拡大できるのではないかという可能性を感じ、行政官になったという経緯です。

なぜアーティストから公務員になったかという話にもつながりますが、そのころに読んだ本に、「人間は誰でもアーティストである」という言葉がありました。

その言葉を自分なりに解釈したとき、例えば、教師や看護師など、どんな職業であってもさまざまなアイデアを出して改善することはできるし、アーティストとしての視点で新しい課題を見していくことができると考えました。

アーティストから行政官への転身について語る、デジタル庁 企画官 外山 雅暁の写真

(アーティストから行政官への転身について語る、デジタル庁 企画官 外山 雅暁)

特許庁や経済産業省でデザインを活用

――これまでに取り組んできたプロジェクトは?

外山 最初は特許庁で、デザインの審査を行う意匠審査官として働きました。その後、経済産業省に出向し、デザイン政策を担当しました。そこで一番の課題と認識したのが経営者にデザインを理解していただかなければいけないということでした。

そのデザインは何かというと、ユーザー視点でサービスをつくっていく「サービスデザイン」のことです。それもデザインであることを経営者のみなさんに伝え、経営にデザインを活用していただかなければいけないと思ったのです。

経済産業省でデザイン思考のシンポジウムを開催するなど、経営へのデザイン導入を推進した後、特許庁に戻りました。

2017年に特許庁と経済産業省が共同で意匠法改正の研究会を開催した際、デザイナーや研究者、経営者の方々に意見を聞いていくと「デザインが世の中で必要になっている」というのがみなさんの共通認識でした。それを特許庁として、「もっと発信してもらいたい」という要望が多く寄せられていました。

そこで委員の方々と「デザイン経営宣言」をまとめさせていただきました。デザイン経営の本質はユーザーの視点を持ってサービスをつくっていくサービスデザインです。デザイン経営を発信すると共に、特許庁でもデザイン経営を実践し、サービスを改善するためのデザイン経営プロジェクトチームも立上げ、多くのサービス改善を実現しました。

その後、デジタル化という文脈でサービスデザインのプロセスをいろんな省庁と一緒になってつくることができるのではないかと思い、特許庁からデジタル庁にやって来て、プロジェクトを推進しているところです。

――サービスデザインとは?

外山 基本的には顧客体験をより最善にするために、組織の理論ではなくユーザーの視点に立って仕組みを考えていくことだと思います。

行政でいえば、例えば、何かを申請する必要がある場合、官庁に来ていただくことがありますが、それはユーザー視点の発想ではなくて、行政側の理由によって決められたルールになっています。

そうではなく、そのユーザーが余計な時間を使わなくて済むためには、行政はどうすれば良いのか。そういった視点のマインドチェンジのような、それに気付くための仕組みがサービスデザインであると考えています。

行政へのさらなる普及を目指して

「私が経済産業省に出向した2011〜12年はデザイン思考が日本に入り始めていた時期でした」と語る外山の写真。

(「経済産業省に出向した2011〜12年はデザイン思考が日本に入り始めていた時期でした」と語る外山)

――サービスデザイン普及のための取り組みは?

外山 デジタル庁では、サービスデザインのプロセスを行政のプロセスの中に入れていこうという動きが全庁的にあります。サービスデザインのプロセスで何かをつくったときに、最後、アウトプットする際は、絵を描いたり、ものをつくったりするデザイナーの力が必要です。

そこで、デジタル庁では公共機関や企業がウェブページをつくる時に使える「デザインシステム」を提供しています。これを利用すれば容易にアクセシビリティやユーザービリティの改善につながります。

デザインシステムは、2022年12月に公開しました。多くの方々にダウンロードして使っていただいて、現在4万3000PV(2023年12月時点)を超えています。リリース時にもSNSで話題になり、多くの方々に受け入れられていただいていると感じています。

――さらにサービスデザインを行政に普及させるための取り組みは?

外山 行政向けのデザイン研修を引き続きおこなう一方、もう一歩進めたいのが、地方自治体も含めて、サービスデザインを行政のプロセスにどう組み込んでいくかを考えていきたいですね。

デジタル庁自体が、そのプロトタイプでもあると考えています。デジタル庁の行政のプロセスにユーザー視点を入れて、アップデートされた行政の仕組みをつくる。デジタル庁には出向している行政官もいますので、戻ったときにそのプロセスを導入していただくことで、他の省庁や自治体にも広まっていくと考えています。

(※所属・職名などは取材時のものです)

●関連情報は、以下のリンクをご覧ください。

●デジタル庁ニュースでは、デザインシステムやアクセシビリティに関する記事を掲載しています。以下のリンクをご覧ください。


●デジタル庁ニュースでは、デジタル庁職員などのインタビューを掲載しています。以下のリンクをご覧ください。

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