失敗こそ、最高の教材だ。先進自治体が明かす「疲れないDX推進」の実践例

記事のサムネイルは2枚の写真が写っている。左側はスマートフォンの画面がアップになっているもの。共創PFのワークショップで使われたオンラインホワイトボードの画面だ。右側は共創PFのイベントの様子。登壇者が中央におり、両サイドにモニターが置かれている。参加者がチームに分かれて椅子に座っており、登壇者の方を見ている。写真には後ろ姿が約20人ほど写っている。


他の自治体の成功事例は、DXを進めるうえで心強い手本になります。ただ、その一方で、「うまくいった話」だけでは見えてこないものもあります。

どこでつまずき、どう乗り越えたのか――。実際にDXを前に進めるヒントは、そうした試行錯誤の中にこそあるのかもしれません。

地方公共団体と政府機関の職員が自由に意見を交わせるオンライン上のコミュニティ「デジタル改革共創プラットフォーム(共創PF)」(デジタル庁が運営)では、オフラインの勉強会「共創PFキャンプ」を全国各地で随時開催しています。2026年6月開催の「共創PFキャンプ in デジタル庁『疲れないDX推進』を考える編」には、全国から35自治体・48名の職員が参加しました。

この日のテーマは「疲れないDX推進」。正解を外に探し求めて消耗するのではなく、自分たちの現場に合った進め方を着実に積み重ねていく。そのための知恵を、登壇者と参加者が語り合いました。都内自治体のDXを支援するGovTech東京、組織へのDXの浸透に取り組む岐阜県下呂市、失敗の分析を推進に生かす栃木県真岡市が、自らの試行錯誤やつまずきも率直に語り、「疲れないDX推進」のヒントを参加者たちと分かち合いました。また、総務省からは自治体向けの支援メニューが案内されました。

この記事では、主に自治体職員の方に向けて、登壇者が語った試行錯誤とそこから得た学びを紹介します。

人から人へ、都内自治体に広がるDXの輪(GovTech東京)

GovTech東京の田邊進一氏が右手にマイクを持って、立ちながら話している様子。田邊氏の両サイドにはモニターが置かれているが、文字は反射で見えない。写真の左側には「共創PLATFORM」と書かれたパネルも見えている。
(登壇するGovTech東京の田邊進一氏)

小さく始めて、バトンをつなぐ

GovTech東京(DX協働本部 区市町村DXグループ長)の田邊進一氏は、東京都デジタルサービス局とバディを組んで都内の自治体DXを支援する「小さく始めてバトンをつなぐDX」を紹介しました。

GovTech東京は「情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える」というビジョンを掲げ、2023年9月に事業を開始しました。民間人材と行政職員が共同する組織として、2026年6月時点で351名が在籍。田邊氏が所属する区市町村DXグループは2023年度に6名でスタート。都内自治体からの派遣職員を受け入れながら、同時点で33名で構成されています。

主な取組の一つが、行政職員が集まり、繋がる場「Tokyo DX collaboration」の開催です。田邊氏によると、この取組は「他の自治体からの派遣職員ともっと繋がりたい」という声をきっかけに生まれたそうです。毎月テーマを変えながら発表やワークショップを実施し、2年間で延べ898名が参加。2025年度からは、自治体からの派遣職員が企画の中心を担っています。専任の担当者はあえて置かず「それぞれの時間を少しずつかけて運営している」と田邊氏は話します。

こうした取組の根底にあるのが、「小さく始めて、バトンをつなぐDX」という考え方です。所属メンバーにはそれぞれ任期があるため、「在職期間中に成果を作り、継承できる形でバトンを渡すことを常に意識している」と田邊氏は紹介しました。

バトンを受け取り、帰任後に見えてきたこと・変わったこと

2枚の写真が組み合わさっている。左側に新井晶子氏(調布市)が話しており、両手でマイクを持っている写真。右側には脇田伊織氏(品川区)が右手でマイクを持って話している様子の写真。
(左から、登壇する新井晶子氏(調布市)と脇田伊織氏(品川区))

続いて登壇したのは、そのバトンを受け取った二人。GovTech東京への派遣を経験した調布市行革DX推進課の新井晶子氏と、品川区デジタル推進課の脇田伊織氏です。

派遣前の自身について、新井氏は「目の前の業務に追われる毎日で、DXにあまりプラスのイメージを持っていませんでした」と振り返ります。そんな意識に変化が生まれたのが、GovTech東京への1年間の派遣でした。各地の自治体DXのイベントに、時に参加者として、時に運営側として携わるなかで、完璧に準備しなくても「まず小さく始める」ことの大切さを体感しました。

帰任後は人のつながりとノウハウを生かし、庁内向けイベント「CHOFU DX MATSURI 2025」を開催。部署を越えて職員がDXの取組を持ち寄り、他の自治体からも人が訪れ、当日は443人もの参加者が集まったといいます。

「他の部署や自治体がどんなDXに取り組んでいるのか分からない、という声は多いので、職員が庁内外の取組を知る良いきっかけになったと思っています。CHOFU DX MATSURIは、他の自治体のDXイベントを参考に実現できました。当市の事例も、他自治体の皆さんが同様の取組を考える際の一つの参考になれば嬉しいです」(新井氏)

品川区デジタル推進課の脇田氏も「DXというと、システムやネットワークに詳しくないと務まらないのだろうと、身構えていました」と、当初は気後れしていたと振り返ります。

派遣中は、伴走支援で専門家に同行しながらいくつもの自治体DXの現場を回り、他の自治体から来た派遣仲間とも机を並べました。こうした中で、DXの進め方も抱える事情も、自治体ごとにまったく異なるという現実が見えてきました。その経験が、帰任後に「伝える側」として立つ自信につながったといいます。

品川区に帰任後はデジタル推進課で生成AIの活用や人材育成、窓口DXに取り組んでいます。今では他の職員からDXに関する相談が寄せられるようになりました。

「今日のような場も含めて、外で得たものを一つでも持ち帰り、隣の人や同じ課の仲間に伝えられたらと思います」(脇田氏)

「意識を変えてから動く」は逆。小さく動いて変えていく(下呂市)

下呂市の長尾飛鳥氏が右手にマイクを持って話している様子。長尾氏の前にはノートパソコンがあり、後ろにはモニターが見切れている。モニターの画面には自身の自己紹介のスライドに掲載されていた顔写真が見える。
(登壇する下呂市の長尾飛鳥氏)

下呂市DX戦略室の長尾飛鳥氏は、現場に寄り添いながら「小さく動く」ことで組織を変えていく実践を語りました。長尾氏は健康課、市民課、企画課などさまざまな部署を経験し、現在は下呂市のCDO(最高デジタル責任者)補佐官等のほか、デジタル庁の共創PFアンバサダーも務めています。

DX担当に就いてから続けている習慣として紹介したのが「小さな越境」。週に1度は別の部署へ出向き、そこで自分の仕事をする。市民課で半日過ごすこともあれば、福祉の部署で仕事をすることもあるそうです。

「声をかけてもらう機会も広がり、時には消防署やこども園、中学校の職員室にまで足を運ぶようになりました。現場の皆さんにDXをジブンゴトにしてもらうためには、まずDXを進める側が現場をジブンゴトにしなければならないと思ったからです」(長尾氏)

長尾氏のスライドより引用。「上部からの圧力」と書かれたアイコンが左側にあり、「現場のリアル」と書かれたアイコンが右側にある。その下には、「自治体のDXが現場で止まる最大の理由は、技術の不足ではなく現場の納得感の欠如にある」と書かれている。
(長尾氏の投影資料より)

こうした「小さな越境」を重ねるなかで、長尾氏はあることに気づきます。DXが止まる最大の理由は、技術ではなく「現場の納得感」にある、と。トップは推進の旗を振りますが、現場は目の前の業務に追われています。その溝を埋めないまま進めようとすることが、DXが疲弊する原因だと長尾氏は指摘します。

自身も、かつてその溝にはまった一人でした。DX担当になった当時、市役所ではすでにいくつかのオンラインツールが導入されていましたが、議会や財政部門などから費用対効果を問われる中、気づけば数字を示すことばかりに力を注いでいたと振り返ります。

しかし、ただでさえ忙しい現場に「効率化」まで求めるのは無理がある。そう気づいてから、組織のなかで「効率化」という言葉を使わないようにしました。

「現場が求めていたのは、目の前の面倒や不満の解消だったからです」(長尾氏)

この経験から生まれたのが、「引き算のDX」という考え方です。

長尾氏のスライドより引用。だいだい色で「引き算のDX」と大きく文字が書かれている。砂時計と人の手が書かれたイラストも見える。そして、その下には「生産性とは「何をやるか」ではなく「何をやらないか」※金曜15時の「今週やめること」振り返り実践」という文字がある。
(長尾氏の投影資料より)

「生産性とは『何をやるか』ではなく『何をやらないか』」と長尾氏は語ります。何かを新しくデジタル化するのではなく、業務そのものをなくす。業務がなくなれば、面倒や不満も根元から消える。長尾氏によると、毎週金曜15時に「今週やめること」を振り返る時間をつくり、この考え方を実践に落とし込んでいるそうです。

長尾氏のスライドより引用。「変革を加速させるポイント」と題したスライド。①現場の違和感を起点にする(一番重要)、②やらないことを決断する、③対話で周囲を巻き込む、④AIを優秀な相棒にする、⑤「TTPA」で小さく速く試す、と書かれている。右下には人型のアイコンの周りが炎のような模様で覆われているイラストもある。
(長尾氏の投影資料より)

変革を加速させるポイントとして、長尾氏は以下の五つを挙げました。

①現場の違和感を起点にする(一番重要)
②やらないことを決断する
③対話で周囲を巻き込む
④AIを優秀な相棒にする
⑤「TTPA」で小さく速く試す。

ちなみに長尾氏によると、TTPAとは「徹底的にパクってアレンジ」の略。他の自治体の事例をそのまま真似るのではなく、「自分たちの付加価値をつけることで、元の事例を超えていく」という考え方とのことです。

一方で、こうした話をすると「自分の自治体では難しい」という声もよく聞かれるそうです。そうした声に対して長尾氏は、こう語ります。

「その気持ち、よく分かります。でも、周りの人や環境を変えることからは始めません。『意識を変えてから行動する』という順番も、私は逆だと思っています。意識を変えようとすると、現場は反発してかえって動けなくなってしまいます。まずは自分が変わること。そして、小さく動いてみる。やってみて『意外に良かった』と感じる体験が積み重なることで、意識は後から変わっていくのです」(長尾氏)

長尾氏のスライドから引用。「「意識を変えてから行動する」は誤り。まず「行動」させることで意識は変わる。」とある。左側には「意識を変えようとする→現場が反発・停滞する→×→行動が起きない→」と書かれている丸があり、右側には「まず小さく行動する→「意外とよかった」と気づく→意識が自然に変わる→」と書かれている丸がある。
(長尾氏の投影資料より)

最後に長尾氏は、自分なりのDXの解釈として、以下のように話しました。

「“DX”とは、“ドロクサイ変革”のことだと捉えています。その変革を進めるための手段として、デジタルがある。そう考えています」(長尾氏)

正解は外にない。自分たちの「失敗」を見つめる(真岡市)

栃木県真岡市の石崎努氏が登壇している様子。右手にマイクを持ち、眼鏡をかけている石崎氏。その隣にはモニターがあり「失敗から学ぶ「疲れないDX推進」」と書かれているスライドが投影されている。
(登壇する真岡市役所の石崎努氏)

真岡市役所デジタル戦略課デジタル政策係長の石崎努氏は、自らの失敗経験を題材に「疲れないDX推進」の考え方を語りました。

成功事例を紹介しても、なかなか現場が動かない。そんな経験から石崎氏がたどり着いたのは、「正解は外に探すのではなく、自分たちの失敗を見つめるところから始まる」という考え方です。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を引きながら、失敗には必ず理由があり、それを分析することにこそ次に活かせる学びがあると指摘します。

登壇では電子決裁システムの導入とオンライン申請にまつわる二つの失敗を紹介。なぜ、システムを入れたのに現場が混乱したのか。なぜ、良かれと思って進めた取組が反発を招いたのか。自らのつまずきを語りました。

●石崎氏の登壇内容の詳細は、以下のリンクをご覧ください。

自治体DXを「連携」で支える。総務省の支援メニュー(総務省)

総務省の櫻井俊寿氏が左手にマイクを持ち話している様子。櫻井氏の前にはノートパソコン。背景にはモニターや、共創PFのパネル、そして会場のデジタル庁の芝生エリアにある本の数々がうっすらと見える。
(登壇する総務省の櫻井俊寿氏)

総務省(自治行政局地域情報化企画室 地域情報化第一係長)の櫻井俊寿氏からは、自治体が実際に活用できる支援メニューの紹介がありました。

DXの恩恵を全国の住民に届けるには、職員数が少なく手が回りにくい小規模な自治体も含めた全国的な推進が欠かせません。一方で、DXには専門性が必要で、個別の自治体だけでは人材の確保に限界があります。

紹介された支援策は、そうした課題を抱える自治体が一人で抱え込まなくて済むための仕組みです。

総務省の資料より。「都道府県と市町村が連携したDX 推進体制と人材プール機能の確保」と題したスライド。そのすぐ下に①全国的な自治体DX推進のため、都道府県が管内市町村と連携したDX推進体制を構築し、その中で、都道府県が市町村支援のためのデジタル専門人材のプール機能を確保する取組を推進、②総務省としても、必要なノウハウの提供をはじめ、各都道府県における取組推進を総合的にサポートとある。推進体制の囲みの中には、「推進体制に必要な4つの機能」として、①市町村との会議体設置、②ヒアリング等を通じ市町村の現状・課題を把握、③市町村支援のために一定の専門人材を確保、④システム共同調達など推進体制下での取組テーマを設定とある。その右隣には「都道府県」という囲みがあり、DX担当課の職員等のほか、「人材プール」(自治体DXアクセラレータ。任期なし常勤職員/任期付職員/非常勤職員/委託事業者)と書かれている。「常勤アクセラレータを中心に充実を図る」の文字もある。そこから右向き矢印があり、「派遣・支援」の文字。「市町村」「一部事務組合」「連携中枢都市圏」という囲みには、取り組むこと(DX推進リーダー・アクセラレータを中心に取り組む)としてDX推進計画策定(重点取組事項:自治体フロントヤード改革の推進/セキュリティ対策の徹底/地方公共団体情報システムの標準化/自治体のAIの利用促進/公金収納におけるeL-QRの活用/テレワークの推進/マイナンバーカードの取得支援・利用の推進等)、身近なDXの推進による業務改善、広域連携による人材育成、システム・ツールの共同調達等とある。スライドの下部には「総務省による取組支援」として、【人材確保・育成のノウハウ提供】①DX推進体制の構築に向けた伴走支援②「ガイドブック」「参考事例集」③自治大学校等関係機関での研修、【人材確保支援】自治体の採用活動を広報、【アドバイザー派遣】①DXアドバイザー(主に自治体DX、地方公共団体金融機構と共同)②地域情報化アドバイザー(主に地域社会DX分野)、【財政措置】①都道府県等による市町村支援のデジタル人材確保に要する経費、市町村によるCIO補佐官任用等に要する経費、DX推進リーダー育成経費について特別交付税措置②令和7年度から、アクセラレータのうち常勤職員の人件費について普通交付税措置
(総務省提供資料より)

都道府県に専門人材を。「アクセラレータ」による市町村支援

総務省の資料より。「アクセラレータに対する財政措置」として、①都道府県が、デジタル人材としてのスキル・経験を有し、市町村支援業務を行う職員を確保した場合、「自治体DXアクセラレータ」に任命→今後数年間で、全国で500名程度の確保を目指す。②都道府県に対し、アクセラレータの人件費等について財政措置。「アクセラレータの要件」として、「都道府県が任用し、市町村DX支援を主たる業務とする職員のうち、以下のいずれかを満たす者」と書かれており、①民間企業、地方公共団体等においてデジタル分野に係る実務経験を5年以上有すること(デジタル技術を活用した業務改革など。システムユーザー側の経験も含む)。②IPAが実施する高度試験(レベル4相当)のいずれかに合格していること。③①②と同等以上の知見を有すること。※都道府県からの推薦に基づき、総務省が任命。※任命状況(4月1日時点速報値)は121名(40団体)。最後に「アクセラレータ等に対する財政措置」として、常務職員に対しては、令和6年度までは特別交付税(措置率0.7)、令和7年度からは普通交付税(人数に応じて措置/令和8年度は一人当たり840万円程度)。非常勤職員に対しては、令和6年度までは特別交付税(措置率0.7)、令和7年度からも特別交付税(措置率0.7、〜R11)。※都道府県に対し、総務省が財政措置を行うもの(民間企業等に対する補助金ではありません)。※業務委託により確保した場合も、引き続き特別交付税措置。
(総務省提供資料より)

支援の柱の一つが、市町村支援を担う専門人材「アクセラレータ」です。都道府県が、デジタル人材としてのスキル・経験を有し市町村支援業務を行う職員を確保した場合に「自治体DXアクセラレータ」に任命される仕組みで、今後数年間で全国500名程度の確保を目指しています。

令和7年度(2025年度)の65名・25団体から、令和8年度(2026年度)4月1日時点では121名・40団体に増えました。確保にかかる普通交付税措置も、令和8年度は1人当たり840万円程度となっています。

総務省の資料より。「アクセラレータによる市町村支援方法の分類」と題した資料。スライドの上部に3つの項目が列挙されている。①アクセラレータによる市町村支援の手法は、市町村のニーズ・アクセラレータの確保数等に応じ、多様。②管内市町村のDX推進の底上げを図る観点の下、市町村の実情を踏まえた取組が重要。③③・④の場合(下記で説明)には、アクセラレータの間での課題共有や支援方針の確認等、管内での一体性をもった支援が重要。次に①〜④の項目に分かれている。①は相談対応型。アクセラレータは都道府県庁勤務を基本とし、共同調達等の市町村間調整の事務や、市町村から随時寄せられる相談対応を実施→アクセラレータ数が少ない場合でも、多数の市町村に対し専門性を活かした支援を行い、全体の底上げを図ることが可能。②は市町村巡回・課題発掘型。担当市町村を設けず、管内市町村を巡回してのヒアリングや相談対応等を実施→全市町村の丁寧な課題把握や、管内全域の機運醸成を図ることが可能。③は特定市町村重点型。特定の市町村を担当し、日々の相談対応に加え、定期的な訪問による状況確認や実務支援も実施→1人が複数市町村を支援する効率性を確保しつつ、特定市町村への継続的・直接的な支援が可能。④は市町村勤務型。市町村での勤務を基本とし、助言・実務支援・プロジェクト管理等を実施→特定の課題への対応から、日々の業務支援まで、市町村の事情に合わせた支援が可能。
(総務省提供資料より)

支援のかたちは、市町村のニーズやアクセラレータの人数に応じて4つの類型に分かれます。

都道府県で相談に応じる「相談対応型」、管内を巡回して課題を掘り起こす「市町村巡回・課題発掘型」、特定の市町村を重点的に支える「特定市町村重点型」、市町村に勤務して実務まで担う「市町村勤務型」です。

前者3つは都道府県庁への常駐を基本としますが、「市町村勤務型」のみ市町村での勤務を基本とし、日常的な業務支援まで担います。

市町村が直接使える措置と、人材確保を後押しする支援

総務省の資料から。「市町村におけるCIO補佐官等としての外部人材の任用等に係る特別交付税措置【延長】」と題したスライド。市町村のDXを推進する上で、CIOのマネジメントを専門的治験から補佐するCIO補佐官等(※1 CIO補佐官等とは、DX推進のマネジメントを担うCIO等を専門的治験から補佐する者であり、役職の名称がCIO補佐官に限られるものではない)の役割が鍵となるため、市町村がCIO補佐官等として、外部人材の任用等を行うための経費に係る特別交付税措置を令和11年度まで延長。次に「特別交付税措置の概要」として、表が書かれている。対象団体は市町村で、対象経費が「任用等経費」の場合(市町村がCIO補佐官等として、外部人材の任用等を行うための経費として次に掲げるもの(※2 1団体においてCIO補佐官等として複数の外部人材の任用等を行なった場合、財政措置の対象上限は3名分(令和6〜11年度))。特別職非常勤職員として任用する場合→報酬等(期末手当等を含む)。外部に業務委託する場合→委託料等)は、措置額が「対象経費の合計額に0.7を乗じて得た額」で、対象経費の上限額は「なし」、対象期間は「R11年度まで」。対象経費が「募集経費」の場合(市町村がCIO補佐官等として、外部人材の募集を行うための経費)は、措置額が「対象経費の合計額に0.7を乗じて得た額」で、対象経費の上限額は「100万円」、対象期間は「R11年度まで」。留意点として、①措置対象となるCIO補佐官等の業務は、全庁的・横断的にDX推進を図る「特別職非常勤職員の助言業務」に相当するもの。②業務委託も対象となるものの、単なる各種計画策定の業務委託は対象外。また、内部検討の助言等の対象部分は、必要に応じて按分計算して報告していただく必要。
(総務省提供資料より)

市町村が直接活用できる措置もあります。CIO(最高情報責任者)補佐官等の外部人材の任用等にかかる特別交付税措置は令和11年度まで延長されています。

総務省の資料より。「地方公共団体におけるデジタル化の取組の中核を担う職員(DX推進リーダー)の育成に係る特別交付税措置【延長】」と題したスライド。計画的なデジタル人材の育成が喫緊の課題であることを踏まえ、DX推進リーダーの育成に係る経費に係る特別交付税措置を令和11年度まで延長。特別交付税措置の概要として、対象団体は「都道府県、市町村」で、対象経費は「DX推進リーダーの育成に係る研修に要する経費、民間講座の受講料、資格取得のための受験料(初歩的なものではなく、一定の専門的な資格試験を対象)等」。想定される経費は「育成プログラム実施に係る委託費又は負担金」「民間事業者、大学等の講座受講料」「人材育成事業に必要なその他の経費(育成プログラム策定経費、ソフトウェアライセンス料など環境整備に要する経費等)」。措置額は「対象経費の合計額に0.7を乗じて得た額」で、対象経費の上限額は「なし」、対象期間は「R11年度まで」。スライドの右側に三角形のピラミッドが書かれており、上から「高度専門人材」「DX推進リーダー」「一般行政職員」とある。DX推進リーダーは吹き出しで「デジタル分野の専門的な知識・スキルを有し、DXの中核を担う職員」とある。「自治体DX全体手順書」と題した囲みでは「内部職員をDX推進リーダーとして集中的に育成・確保していくにあたっては、DX推進リーダーとして育成する職員を指定し、集中的に育成プログラムを実施することが求められる」とある。指定にあたり、「職員本人の希望」のほかに参考とすべき情報として、対象職員のこれまでの職務経歴(特にシステム、Webサービス・アプリケーション等)・民間IT企業での実務経験、独立行政法人情報処理推進機構が実施する情報処理技術者試験等の資格取得状況。最後に留意点として、①令和8年度から、都道府県等が市町村のDX推進リーダーに対して行う研修等に要する経費についても、措置の対象。②自治体DXアクセラレータとして確保した者に対して行う研修に要する経費についても、当該者をDX推進リーダーに指定する等本特別交付税措置の要件を満たす限り、措置の対象。③育成プログラム上に記載の無い研修や幅広な職員を対象とした研修に係る経費は対象外。
(総務省提供資料より)

またDX推進リーダーの育成にかかる特別交付税措置は、令和8年度(2026年度)から都道府県や近隣市町村と連携した広域的な人材育成も対象になりました。

総務省の資料より。「自治体デジタル人材確保支援事業【継続】」(R8当初予算額案0.6億円、R7補正予算額2.0億円、R6補正予算額2.0億円)と題したスライド。推進体制の構築・活用状況については、都道府県ごとにばらつきがあり、特に、推進体制の中心となる人材プールの確保にあたっては、多くの都道府県が、適切な人材がいないことや人物像・ジョブディスクリプションの明確化といった点に課題を抱えている状況。→フォーラム開催等により全国的なDXの機運を醸成しつつ、都道府県における人材確保及び具体のDX取組テーマにそった市町村支援についての伴走支援、都道府県による採用を希望するデジタル人材についての情報提供等を実施することで、DX推進体制の一層の強化と活用推進を図る。①機運醸成として、自治体職員を対象としたフォーラムを開催。自治体のDXを支援する事業者やDX分野の有識者も招へいし、市町村支援の成功事例の共有や意見交換を実施。→DXの意識を広く共有・全国的なDXの機運を底上げ。②人材確保・活用支援として、都道府県のニーズを踏まえ、人材確保・市町村支援の取組を伴走支援。総務省が、県と市町村で連携して取り組むべき「重点テーマ」を掲示(重点テーマは吹き出しで、システムの共同調達/自治体フロントヤード改革の推進/職員の業務改善に向けた庁内DXの推進/データ利活用/市町村のデジタル人材の確保・育成に係る方針の策定支援/自治体のAIの利用促進)。都道府県が選択したテーマに沿った取組と、その推進の基盤となるアクセラレータの確保を支援。伴走支援を通じて創出した人材プール活用の好事例を全国に展開。アクセラレータとして市町村DX支援を希望するデジタル人材について、総務省が都道府県に情報提供→人材確保と具体的なDXの取組を併せて支援することで、実効性のある推進体制構築を推進。③人材育成支援として、アクセラレータやDX推進リーダーのスキル支援を実施。都道府県が確保した「自治体DXアクセラレータ」の自治体内での活躍を支援するため行政実務研修。自治体業務に精通した内部職員を即戦力のDX人材として育成するためのDX推進リーダー育成研修→人材確保支援と併せて職員育成支援を行うことで、推進体制の質の向上につなげ、市町村支援の実行性を高める。
(総務省提供資料より)

都道府県の人材確保や市町村支援の取組を伴走で支える「自治体デジタル人材確保支援事業」も実施されています。

櫻井氏によると、今年度は6県が採用されており、人材確保が難しいと課題を抱えるところにもノウハウの提供や採用に向けた支援を実施しています。また、全国の自治体のデジタル人材の採用情報を一覧できるランディングページも整備されています。

総務省の資料より。「人材プールの確保に向けた人材・協力企業の堀り起こし」と題したスライド。都道府県と市町村が連携したDX推進体制を構築し、その中で、都道府県が市町村の求める人材プールを構築していく上では、「人材の供給源」の確保が課題。→デジタル人材への広報やIT企業等に対する働きかけを実施。「デジタル人材に向けた広報」として、自治体独自のデジタル人材の募集では応募が集まりにくいという実情を踏まえ、自治体のデジタル人材の採用活動を、SNS等を活用した広報により支援。SNS等に配信する広告から遷移するランディングページでは、各自治体におけるデジタル人材の採用時期や勤務条件、採用募集ページのリンク等を掲載し、潜在層を含むデジタル人材が採用情報にリーチしやすい環境を整備。広告媒体として、静止画バナー広告(Facebook、Instagram、Yahoo!)、動画広告(YouTube)→ランディングページ(掲載内容は、全国の自治体がデジタル人材を募集/求める人物像(デジタル人材とは)/柔軟なワークスタイル(常勤、非常勤、副業、テレワークなど)/全国の採用状況一覧)→出口(リンク先)各自治体の採用HPに遷移。「IT分野等の企業への働きかけ」として、自治体に対するデジタル人材の派遣に関心を有するIT企業等を中心に、人材プール確保の取組への協力を働きかけ。協力企業の一覧を、派遣調整を希望する都道府県に対し提供。
(総務省提供資料より)

総務省の資料より。「DXアドバイザー(地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業)」と題したスライド。事業概要として、DX各分野の専門家によるアドバイスを、申請1件あたり年間原則10回以内受けられる。派遣人数は1回につき、原則1名。1日の派遣につき、アドバイスの時間は2時間以上7時間以内。自治体による派遣経費(謝礼、旅費)の負担はなし。地方公共団体金融機構が負担。アドバイザーは自治体からの推薦による登録が可能。「類型と実績」は、①課題対応アドバイス事業【手挙げ式】:自治体行政におけるDX等に取り組む市町村等に対する支援。具体例はDXの機運醸成、情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの利活用、行政手続のオンライン化、データ利活用・EBPM、BPR・業務改革、自治体職員のデジタル人材への育成、外部デジタル人材の確保、セキュリティ対策等。令和6年度実績は185団体。②課題達成支援事業【プッシュ型】:令和7年度までに標準化対応に向け、事業推移に課題を抱えている団体に対する支援。具体例は小規模団体等を中心に移行計画の作成、Fit&GAPの実施等の標準システム導入に当たっての技術的・専門的な支援。令和6年度実績は36団体。③啓発・研修事業:都道府県が市区町村の啓発のための研修会・相談会を実施。具体例の記載はなし。令和6年度実績は15団体(うち1団体は首長・管理者向けトップセミナー)。活用事例集を策定(総務省HP:https://www.soumu.go.jp/main_content/000921634.pdf)→「システム調達と業務改革」、「人材育成」、「経営層の意識醸成」に係る具体の助言内容や効果等を掲載。「更なる活用に向けた改善(令和8年度〜)」として、申請1件あたりの派遣回数を年間原則5回から年間原則10回に拡充。自治体におけるAIの利用に関するワーキンググループ報告書において、自治体の業務効率化や行政の質の向上のため、生成AI・AI・RPAの重要性が言及されたことや、自治体における支援ニーズ等を踏まえ、取組分野に「AI(生成AI含む)・RPAの利活用の推進」を明記。取組分野はDXの機運醸成、情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの利活用の推進、行政手続のオンライン化、データ利活用・EBPM、BPR・業務改革、自治体職員のデジタル人材への育成、外部デジタル人材の確保、セキュリティ対策、AI(生成AI含む)・RPAの利活用の推進、消防防災DX、その他。
(総務省提供資料より)

DX各分野の専門家によるアドバイスを費用負担なく受けられる「DXアドバイザー事業」も利用できます。

申請1件あたり年間原則10回以内のアドバイスを受けられ、令和8年度からは派遣回数が年間原則5回から10回に拡充されました。

スキルを育てる。デジタル分野の研修メニュー

総務省の資料より。「地方公共団体職員に対するデジタル分野の研修等の概要」と題したスライド。自治体DXに関する最新動向等を踏まえつつ、J-LIS等の関係機関と連携しながら自治体職員に対するデジタル分野の研修の充実を図るとともに、研修情報を取りまとめて各自治体に情報提供。【自治体DX総論】自治大学校(自治体幹部候補職員)/J-LIS(自治体職員)※オンライン受講も可、録画配信等/地方自治研究機構(自治体情報行政担当以外の職員)※オンライン受講も可/国際文化アカデミー(市町村職員)/国際文化アカデミー(小規模自治体職員)/市町村アカデミー(市町村職員)/IPA(誰でも)※録画配信等【業務改革等】地方自治研究機構(自治体情報行政担当以外の職員)※オンライン受講も可/J-LIS(自治体職員)※オンライン受講も可、録画配信等/国際文化アカデミー(市町村窓口業務担当職員)/国際文化アカデミー(市町村役員)/市町村アカデミー(市町村職員)/市町村アカデミー(市町村教育委員会事務局職員、学校現場の教職員)/市町村アカデミー(市町村情報政策担当職員)【デジタル人材の確保・育成】自治大学校(業務の中核を担う職員(幹部職員を含む))/自治大学校(自治体DX推進リーダー候補職員等)/市町村アカデミー(市町村DX推進リーダー候補職員等)/国際文化アカデミー(市町村DX推進リーダー候補職員等)/APPLIC(自治体CIO /CDO候補者等)【情報システム・セキュリティ】自治大学校(自治体セキュリティ対策担当職員)/J-LIS(自治体職員)※オンライン受講も可、録画配信等/IPA(情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)資格取得者)/NCO(自治体幹部職員、情報システム担当職員)/NICT(自治体セキュリティ担当職員)/NICT(情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)資格取得者)【データサイエンス】J-LIS(自治体職員)※オンライン受講も可、録画配信等/国際文化アカデミー(市町村職員)/統計研究研修所(自治体職員)※録画配信等
(総務省提供資料より)

また、デジタル分野の研修メニューもあります。DX推進リーダー育成特別研修は、9月と12月に自治大学校、3月に市町村アカデミーで実施予定です。また、近年のサイバー攻撃の高度化を踏まえ、10月と12月にサイバーセキュリティ対策に関する研修も開催予定となっています。

このほか、自治体DXに関する研修は関係機関と連携しながら幅広く提供されており、詳細は総務省ホームページで確認できます。

「個々の自治体では限界があるから、連携で支える」というのが、これらの支援に共通する考え方であると櫻井氏は説明。一つの自治体だけで抱え込まなくてもいい。そのための仕組みの整備を、総務省と都道府県が進めています。

お知らせ:デジタル庁の自治体DX支援

デジタル庁では、自治体の窓口DXを後押しする複数の取組を進めています。

一つが「窓口BPRアドバイザー派遣事業」です。窓口BPRについて高い知見・経験を持つ自治体職員をデジタル庁が「窓口BPRアドバイザー」として委嘱し、派遣を希望する自治体へ派遣します。アドバイザーは、自治体が窓口BPRを自走するための助言・提言・情報提供など、きっかけづくりを担います。

もう一つが、データを活用して窓口業務を支援する「窓口DXSaaS」です。自治体が自らの理想の窓口にマッチするサービスを選択できる仕組みとなっています。これらの取組の詳細や実践事例については、以下の記事をご覧ください。

こうした取組と並行して、デジタル庁では「デジタル改革共創プラットフォーム(共創PF)」を運営しています。ビジネスチャットツールSlackを活用し、国と地方の垣根を越えて日々の悩みから政策立案まで気軽に相談・情報共有できる場です。窓口DXに取り組む自治体からの気付きも日々共有されています。

地方公共団体と政府機関の職員であれば誰でも参加でき、1,530の地方公共団体から約1万3,300人、38の政府機関から約2,100人が参加しています(2026年3月末時点)。業務や政策テーマごとにチャンネルを開設しており、随時参加者を募集しています。ご参加をお待ちしております。

●共創PFに関する情報や関連記事は、以下のリンクをご覧ください。

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