マイキープラットフォーム(PPID方式)で窓口業務の削減を狙う。三田市「スマート図書館サービス」の実践に学ぶ(共創PFキャンプ)
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デジタル庁は2026年1月、名古屋市内でオフラインの勉強会「共創PF(プラットフォーム)キャンプ in 東海 〜マイナンバーカード利活用編〜」を開催しました。
地方公共団体と政府機関の職員が自由に意見を交わせるオンライン上のコミュニティ「デジタル改革共創プラットフォーム(共創PF)」(デジタル庁が運営)では、オフラインの勉強会「共創PFキャンプ」を全国各地で随時開催しています。
今回は、東海地方を中心に10団体の職員16人が参加。参加者は、マイナンバーカードの機能や自治体での活用事例を学びながら、自分たちのまちでどのように活用できるかワークショップを交えて検討しました。
この日の勉強会では、マイナンバーカードを活用した「スマート図書館サービス」を実現した兵庫県三田市の担当者が取組を発表しました。
マイナンバーカードの利用方法のうち、暗証番号を入力しない、いわゆる「かざし利用」を図書館で活用し、先進的な取組を実現しているのが兵庫県三田市です。この記事では主に地方公共団体の職員を対象に、三田市の発表内容を紹介します。
「図書館のデジタル化を進めたい」という相談から全てが始まった

(兵庫県三田市総務部DX推進課スマートシティ推進係の岩﨑謙二係長)
兵庫県三田市は神戸市の北側に位置し、令和4(2022)年度から「さんだ里山スマートシティ構想」を掲げてデジタル活用に取り組んできました。
マイナンバーカードについても、平成30(2018)年度からのコンビニ交付をはじめ、市民健康アプリや公共施設予約システムなど、さまざまな場面で活用を進めてきました。
今回、岩﨑氏が紹介した「スマート図書館サービス」が動き出したのは、令和5(2023)年度のことでした。

(当日の投影資料より)
岩﨑氏は構想当時を振り返ります。
「令和5(2023)年度予算要求に際して、図書館の業務所管課から『ICタグや自動貸出機を導入して図書館をもっと便利にしたい』という相談があったことがきっかけでした。私はデジタル部門でマイナンバーカードの活用を推進する立場におり、『マイナンバーカードで図書館サービスをもっと便利にできないか』と考え、ベンダーも交えて検討を始めました」
当時から、利用者証明用電子証明書のシリアル番号を活用してマイナンバーカードと図書館カードを紐づける仕組みは存在していましたが、この方式にはいくつかの課題があったといいます。
岩﨑氏は三つの課題を挙げます。
「一つ目は、利用者がマイナンバーカードを使う前に、図書館窓口で図書館カードを発行する必要があったことです。三田市では自宅にいながら本が読める『電子図書館』も提供していましたが、このサービスを利用する場合でも、まず図書館に足を運んで手続をしなければなりませんでした」
「二つ目は、手続の煩雑さです。図書館カードを発行した後、さらにマイナンバーカードとの紐付け申請書を記入する必要がありました。そのため、利用者・職員の双方にとって手続きが二重になっていました」
「三つ目は、貸し出し時の操作です。マイナンバーカードで本を借りる際、4桁の暗証番号を入力する必要がありました。従来からの図書館カード利用に比べ操作に時間がかかり、職員がサポートに入る場面もありました」
まず「理想の姿」を描き、関係者と共有する

(当日の投影資料より)
こうした課題を前に、岩﨑氏が最初に取り組んだのは、「理想の図書館」を具体的にイメージすることでした。
「大切にしたかったのは、利用者へのサービス向上と、職員の負担軽減の両立です。そこで三田市がまず取り組んだのは、理想の姿を描くことでした」
「自宅からオンラインで利用者登録ができる。そのまま図書館に行く前に本の予約ができる。来館したら自動貸出機にカードをかざすだけで借りられる――。そんな『理想の図書館』を具体化し、『では、どうしたらこの仕組みを作れるか』を図書館職員やベンダーなど、関係者を交えて話し合いました」
理想を共有した上で、次に検討したのは実現手段です。既存の方式では、先に図書館カードを発行しなければマイナンバーカードを紐付けられません。「図書館に行かずに利用を始める」という理想を実現するには、別の仕組みが必要でした。
マイキープラットフォーム(PPID方式)で「図書館カードレス」を実現

(当日の投影資料より)
そこで岩﨑氏が着目したのが、令和5(2023)年度にデジタル庁が新機能の改修を行った「マイキープラットフォーム」です。
「マイナンバーカードのICチップに搭載された機能(利用者証明用電子証明書と券面事項入力補助AP)を使い、自治体独自のサービスと連携できる『マイキープラットフォーム』です。この仕組みを使えば、図書館カードを発行しなくても、マイナンバーカードだけで利用者登録から貸し出しまで完結できると考えました」
三田市は導入にあたって、マイナンバーカードの利活用促進を目的とした「デジタル田園都市国家構想交付金(Type X)」に応募し、採択を受けました。

(当日の投影資料より)
このマイキープラットフォームの仕組みで重要な役割を果たすのが「PPID」です。岩﨑氏は次のように説明します。
「PPIDとは、マイナンバーカードで登録を行うとマイキープラットフォームから自動的に発行されるIDです。PPIDの利点は、図書館カウンターで登録しても、自宅からオンラインで登録しても、同じIDが使える点です。どちらの方法で登録しても、その後は同じようにサービスを利用できます」
カードをかざすだけ、有効期限も自動延長で更新手続を不要に

(当日の投影資料より)
利用者登録の課題を解決した後、次に取り組んだのは館内での貸し出しでした。
「従来の方式では、マイナンバーカードで本を借りる際に4桁の暗証番号を入力する必要がありました。この課題を解決するために導入したのが、自動貸出機と『かざし利用』の組み合わせです」
「カードをかざすと、PPIDで利用者が識別され、暗証番号を入力しなくても本を借りられます。職員が対面で貸し出し処理する業務が大幅に減り、利用者・職員の双方にとって負担が軽減されます」
さらに工夫を凝らしたのが、有効期限の自動延長機能です。
「カードをかざすたびに利用登録の有効期限が自動延長される仕組みも取り入れました。三田市では、図書館カードの有効期限を3年間に設定しています。従来は、有効期限が切れるたびに窓口で本人確認を行い、更新手続をする必要がありました」
さらに、岩﨑氏は続けます。
「マイナンバーカードを活用した新しい仕組みでは、カードをかざした時点で本人確認が完了します。有効性が確認できれば、そこから自動的に有効期限が延長されます。つまり、マイナンバーカードを使って定期的に図書館を利用することで、利用者は更新手続のために窓口を訪れる必要がなくなりますし、職員も更新対応に割いていた時間を他の業務に充てられるようになります」
電子認証アプリで、自宅にいながら本人確認

(当日の投影資料より)
オンラインでの利用者登録を実現するには、自宅でも本人確認ができる仕組みが必要でした。想定した仕組みは、スマートフォンのアプリでマイナンバーカードを読み取る『認証アプリ』でした。
ただし、当時は選択肢が限られていたといいます。
「図書館システムの構築を進めていた令和5〜6(2023〜24)年度当時、デジタル庁の『デジタル認証アプリ』はまだ存在しませんでした。検討の結果、当時利用可能だったサイバーリンクス社の認証アプリ『マイナサイン』を採用し、オンラインでの利用者登録の仕組みを構築しました」
この仕組みにより、利用者は自宅にいながら利用者登録を完了できるようになりました。図書館に足を運ばなくても、思い立ったときにすぐサービスを使い始めることができます。また、職員にとっても窓口での登録対応が減り、その分を他の業務に充てられるようになりました。
窓口対応の削減で生まれた余力を、新たなサービス拡充へ

(当日の投影資料より)
デジタル化による効果は、窓口業務の削減だけにとどまりませんでした。
岩﨑氏は新たな展開を紹介します。
「デジタル化によって図書館職員の窓口対応が減ったことで、新たなサービスを拡充する余力が生まれてきます」
「例えば、図書館以外の場所でも本を受け取れるサービスを始めています。市民センターでの受け渡し・返却に加え、市民センターがない地域では郵便局と連携し、郵便局の窓口でも本の受け渡しと返却ができるようにしました」
興味深いのは、この受け渡しサービスではあえてマイナンバーカードを使っていない点です。
「市民センターや郵便局での受け渡しでは、あえてマイナンバーカードを使っていません。受け渡し場所にカードリーダーを設置するとなると、機器の導入費用やネットワーク整備が必要になるためです」
「オンラインで利用者登録と本の予約を済ませておき、貸し出し処理は運用でカバーすることで、受け取り時にマイナンバーカードを使わなくてもサービスは成り立ちます。『どこでカードを使うか』を絞ることも、設計上こだわったポイントです」
図書館で培った知見を、公共施設予約システムに活かす

(当日の投影資料より)
図書館での経験を活かし、三田市では令和7年度から公共施設予約システムをスマート施設予約サービスとして刷新し、マイナンバーカードの活用をスタートしました。
「こちらも来館することなく、オンラインから新規の利用者登録ができます。また、デジタル庁のデジタル認証アプリを活用することで、マイナンバーカードを利用した本人確認を行います。IDやパスワードを忘れても、カードをかざすことでログインができます」
「今後、より公平で信頼性の高いサービス提供を行う上で、PPIDを活用した認証方式は重要な手段です。PPIDの活用により、1人1アカウントの原則をより確実に実現し、市民の皆様に安心してご利用いただける環境を整備できると考えています」
利用者と職員の双方に寄り添う設計が、サービスの質を高める

(岩﨑氏による発表の様子)
ここまで紹介した一連の取組を通じて、岩﨑氏が大切にしてきた考え方があります。
「取組を通じて意識してきたのは、『サービスデザイン12箇条』の考え方です。初めて図書館を使う人が本を借りるまでの一連の流れを想像し、どうすれば利便性が高まるかを考える。同時に、利用者の利便性だけでなく、職員の業務負担軽減も意識する。こうした視点が、仕組みづくりの土台になりました」
そして何より強調するのが、「共に創る」姿勢です。
「デジタル技術はあくまで手段であり、『デジタル化すれば便利になる』というわけではありません。何の目的で、何を狙ってカードを活用するのか。場合によっては『使わない』という選択肢もあり得ます。先ほどの市民センターや郵便局での受け渡しがその例です」
岩﨑氏は最後に、他の自治体担当者へのメッセージとして次のように語ります。
「最後にお伝えしたいのは、『一人で取り組まない』ということです。自治体内だけで議論を閉じるのではなく、さまざまな人と関わりながら進めていく。共創プラットフォームもそうですし、総務省やデジタル庁が実施しているアドバイザーの派遣事業なども活用できます。いろいろな人と話しながら課題解決に取り組んでいくことが、結果として近道になるのではないか、と考えています」
質疑応答:体制づくりから利用状況まで
三田市の発表を受けて、参加者からさまざまな質問が寄せられました。問い合わせ対応の体制、庁内の役割分担など、実際に導入を検討する際に気になるポイントが議論されました。ここでは、質疑応答の一部を紹介します。
Q.マイナンバーカードを使ったオンラインサービスについて、問い合わせはどこの部署が対応しているか。
岩﨑氏:
サービスを所管する部署が対応しています。三田市の場合、図書館のサービスは図書館が、公共施設予約システムは各施設の窓口がそれぞれ問い合わせを受けています。
Q.「かざし利用」では、利用者証明用電子証明書を更新した場合もそのまま使えるか。
岩﨑氏:
使えます。マイキープラットフォームは電子証明書が何度変わっても、同じPPIDを返す仕組みになっています。デジタル認証アプリも同様の動きをするため、電子証明書の更新後も継続して利用できます。
Q.原課とデジタル担当、マイナンバーカードの交付担当で、どのような役割分担をしているか。
岩﨑氏:
三田市の場合、カード交付担当との連携はあまりありません。交付窓口でカードの中身を書き換える必要がないため、新しいサービスを始める際も特に連絡していません。
図書館のシステム導入時は、予算は原課(図書館所管課)が要求し、その支援や企画調整はDX推進課が担当しました。また運用面については、原課が図書館の指定管理者と調整しました。公共施設予約システム改修時はDX部門の予算を用いて、ほぼDX側でプロジェクトを主導し、運用面は原課を巻き込みながら進めました。
Q.マイナンバーカードと従来の図書館カードの利用比率は。
岩﨑氏:
マイナンバーカードの利用者登録の人数は、三田市全図書館ユーザーの1割程度です。なお、三田市の図書館では、マイナンバーカードへの完全移行は目指していません。設計段階から「マイナンバーカードを利用していない人でも従来通り利用できるようにする」ことを意識しています。デジタル技術はあくまで手段。利用者が自分に合った方法を選べる状態を維持することが重要だと考えています。
お知らせ:共創PFでは参加者を随時募集中
デジタル改革共創プラットフォーム(共創PF)では、ビジネスチャットツールのSlackを利用し、国と地方の垣根を越えて日々の悩みから政策立案まで気軽に相談、情報共有できます。
地方公共団体と中央省庁の職員であれば誰でも参加でき、1,495の地方公共団体から約1万2,500人、39の政府機関から約2,200人が参加しています(2025年10月1日時点)。
業務や政策テーマごとにチャンネルを開設しており、マイナンバーカードの利活用を相談するチャンネルもあります。随時参加者を募集中です。ご参加をお待ちしております。
●共創PFに関する情報は、以下のリンクをご覧ください。
- デジタル改革共創プラットフォーム|デジタル庁(※外部リンク)
●デジタル庁ニュースでは、三田市のスマート図書館サービスを動画でも紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
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