水道事業の経営状況を一目で。課題を把握し次につなげる「水道ダッシュボード」

全国各地で水道施設の老朽化が進み、人口減少等で料金収入も減る中、水道事業の経営は厳しさを増しています。一方で、経営状況を適切に把握するためのデータ収集は、職員にとって大きな負担となっていました。さらに、収集したデータは数値が中心であったため、その内容を読み取るのにも時間を要していました。

こうした課題を受け、総務省、国土交通省、デジタル庁が連携して開発したのが「水道事業等の経営状況に関するダッシュボード」(※外部リンク)(以下、水道ダッシュボード)です。水道ダッシュボードにより、視覚的に水道事業の経営状況を把握することができるようになりました。

今回は、水道ダッシュボードの開発の背景や使いやすさの工夫、京都市上下水道局での活用について取材しました。

厳しさを増す水道事業経営、状況把握に欠かせないデータ収集が負担に

動画の切り取り画像。京都市松ケ崎浄水場の内部を映し出した写真で、中央に青い管がおよそ10本並んでいたり、その管のそばにはハンドルがあったりする。
(京都市松ケ崎浄水場の内部)

京都市にある松ケ崎浄水場は、1927年(昭和2年)に建設され、まもなく100年を迎えます。京都市上下水道局経営戦略室の小堀善光課長は、水道事業の課題について次のように話します。

「多くの事業体に共通した課題ですが、高度経済成長期に整備した水道管路や、浄水場などの水道施設が老朽化し、施設の更新が必要となっています。一方で、節水機器の普及や人口減少に伴って水需要が減少していることから、料金収入も減少しています。(これらは、水道事業の経営において)大きな課題だと認識しています」(京都市上下水道局・小堀課長)

水道管路や浄水場を更新・維持するには、多額の投資が必要であり、計画的に資金を確保する必要があります。その土台となるのが、水道事業の安定した経営です。小堀課長は 「水道は市民生活に欠かせないライフライン。将来にわたって持続可能なものとしていく必要があります」 と話します。

動画の切り取り画像。京都市上下水道局経営戦略室経営企画課の小堀善光課長がパソコンに向かって仕事をしている様子。手元には紙の資料も見える。
(京都市上下水道局・小堀課長)

経営を安定させるには、まず自らの経営課題を客観的に把握することが欠かせません。そのためには、他の水道事業体の経営状況を把握し、比較することが有効です。

「データを収集するのには、時間と労力がすごくかかります。そこに時間を割くよりも、分析の方に時間を割きたいという思いがあります」(京都市上下水道局・小堀課長)

3省庁と自治体で「出すべき情報」から検討

動画の切り取り画像。京都市上下水道局の小堀善光課長が右側に座って、向かい側にデジタル庁ファクト&データユニットの秋永将が座っている。2人の間にはスクリーンがあり、水道ダッシュボードが映し出されている。
(デジタル庁ファクト&データユニットの秋永将(左)と、京都市上下水道局・小堀課長(右))

こうした課題を受け、デジタル庁は、各事業体が個別に行っていたデータの収集や集計を、ダッシュボード上で自動化しようと、総務省・国土交通省とともに水道ダッシュボードの開発に着手。水道事業への支援では、総務省が経営・財政面を、国土交通省が施設の老朽化対策や耐震化を担っていることから3省庁が連携することとなりました。さらに、水道事業体にも加わってもらいながら、現場が抱える課題や要望を整理しました。

総務省自治財政局公営企業経営室の矢島夏美係長は、開発の目的について次のように話します。

「(これまで)水道事業体が経営状況を客観的に把握できたり、他の水道事業体や類似団体と比較できたりするようなツールはありませんでした。そこで、経営状況を“見える化”することを目的としました」(総務省・矢島係長)

動画の切り取り画像。水道ダッシュボードの開発に携わった総務省自治財政局公営企業経営室の矢島夏美係長がインタビューに答えている様子。矢島係長の前にはパソコンがある。
(水道ダッシュボードの開発に携わった総務省自治財政局公営企業経営室の矢島夏美係長)

国土交通省上下水道企画課の平野裕之企画専門官は、これまでの経営指標の見方に対して次のような課題を感じていたといいます。

「(水道事業の経営指標については)内容を見たり、理解したりするのに時間がかかります。(こうした理由から経営指標のデータに対して)とっつきにくさがあったので、徹底した見える化が必要だと考えました」(国土交通省・平野企画専門官)

ダッシュボードの開発を担当したデジタル庁ファクト&データユニットの秋永将データプロジェクトマネージャーは、開発の際に意識した点について次のように話します。

「単純にダッシュボードを作るということだけではなく、そもそもどういう情報を出していくべきなのか。関係者と話し合いを進めながら検討してきました」(デジタル庁・秋永)

水道事業等の経営状況に関するダッシュボード画面。シンプルなデザインで経営状況の推移をグラフで確認できる。水道事業等の数は1,230、供給単価(円/立方メートル)は177.3、給水原価(円/立方メートル)は181.7、管路経年化率は26.8%、管路更新率は0.59%、給水人口(人)は120,263,049、経常収支比率は106.7%、料金回収率は98.2%、有収率は89.2%、導・送水管の耐震適合率は44.6%。それぞれ2015年と2020年を比較した棒グラフや折れ線グラフもついている。
(水道事業等の経営状況に関するダッシュボード画面。シンプルなデザインで経営状況の推移をグラフで確認できる)

見るべきデータを精査し、誰でも直感的に使える画面に

水道ダッシュボードに求められたのは、複雑な経営状況をわかりやすく示し、他の事業体との比較から課題を把握して、次の判断につなげることでした。

デジタル庁の秋永は、ダッシュボード設計の考え方をこう話します。

「データに詳しくない方でも、簡単に重要な内容を把握できることを重視しています。ただデータを見られるだけではなく、本当に見るべきデータは何なのか。見る方が経営状況を改善するに当たって何が必要なのかを精査した上で、画面を作成しています」

「さらに、興味がある方はどんどん深掘りできる設計にしています。国から都道府県、市区町村、水道事業体という形で、細かなデータまで見ることができます」(デジタル庁・秋永)

より見やすく、より使いやすくするため、色やフォント、ボタンの配置なども工夫し、利用者が迷わず操作できる画面構成にしました。

他事業体の状況を比較し、自らの課題を検討する手がかりに

京都市上下水道局では、すでに水道ダッシュボードを業務に活用しています。水道ダッシュボードには、経営指標だけでなく、施設に関するデータも掲載されています。小堀課長は、実際の使い方について次のように話します。

「施設の老朽化の状況なども掲載されているので、それぞれの都市がどういう状況かを把握するのに活用しています」(京都市上下水道局・小堀課長)

経営と施設の状況の両面から、他の水道事業体と比較できることは、自らの事業の特徴や課題を検討するための手がかりになります。

デジタル庁は、府省庁を横断したデータ活用を支えるハブとして、行政DXを推進しています。今後も総務省や国土交通省、自治体と連携し、水道ダッシュボードを通じて現状把握や課題分析を支援することで、持続可能な水道事業に貢献していきます。水道ダッシュボードは、インターネット上で一般公開されています。水道事業に携わる担当者はもちろん、水道に関心を持つ皆さまも、お住まいの地域の状況を確認できます。

●水道事業等の経営状況に関するダッシュボードは、以下のリンクからご覧ください。
https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/watersupply

●デジタル庁ニュースの動画では、実際に水道ダッシュボードを活用した京都市上下水道局経営戦略室・小堀課長の声を紹介しています。

動画の内容をテキストで読む

(※記事内容は取材時の情報に基づきます)


●関連情報は、以下のリンクをご覧ください。

●デジタル庁ニュースでは、ダッシュボードに関する動画を公開しています。以下のリンクをご覧ください。

●デジタル庁では、データの利活用に携わる人材を募集しています。詳しくは以下のリンクをご覧ください。