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デジタル監から都副知事に3つの質問 「都のDX」「ユーザー視点」「キャリア改革」 東京都 副知事 宮坂 学×デジタル庁 デジタル監 浅沼 尚 前編

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東京都 副知事 宮坂 学氏とデジタル庁 デジタル監 浅沼 尚。

それぞれの立場で行政のデジタル化を実践する2人が互いに、「今、聞きたいこと」や「気になること」をそれぞれ3つずつ質問。

前編は、浅沼 デジタル監から宮坂 副知事に、「都のDX」「ユーザー視点」「キャリア改革」の3つを聞いていきます。

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●後編は以下のリンクをご覧ください。

行政のデジタル化を実践する2人

「政策やサービスの実装を組織づくりをしながら担っています」と語るデジタル庁 デジタル監 浅沼 尚。

(「政策やサービスの実装を組織づくりをしながら担っています」と語るデジタル庁 デジタル監 浅沼 尚)

浅沼 私は、デジタル庁立ち上げのタイミングでCDO(チーフデザインオフィサー)として入庁し、2022年4月からはデジタル監というポジションで仕事をしています。企業に例えると、大臣をCEOとすると私はCOO。政策やサービスの実装を、組織づくりをしながら担っています。

「行政のデジタル化とスタートアップに関する取り組みに力を入れている」と語る東京都 副知事 宮坂 学氏。

(「行政のデジタル化とスタートアップに関する取り組みに力を入れている」と語る東京都 副知事 宮坂 学氏)

宮坂 私は東京都の副知事と、「GovTech(ガブテック)東京」という新しい組織の理事長を兼務しています。東京都には4年半前に着任し、行政のデジタル化とスタートアップに関する取り組みに力を入れています。

質問①「東京都のデジタル改革における挑戦は?」

「行政だと減点法みたいな雰囲気がありますが、どう加点法に変えていくか」と語る浅沼 デジタル監。

(「行政だと減点法みたいな雰囲気がありますが、どう加点法に変えていくか」と語る浅沼 デジタル監)

浅沼 東京都のデジタル改革を進める中でどんなチャレンジ、困難がありましたか。

宮坂 新型コロナ禍は大変でしたね。保健所とのやりとりを「FAXでまだやっているのか」とお叱りを受けました。言いわけしてもしょうがないので、絶対に直そうと思い、FAXの使用は99%減らすことができました。

浅沼 すごいなと思ったのは、かなり早い段階でKPIを分かりやすく数値で示していましたよね。

宮坂 数字に残る仕事をするって大事だと思うんですね。FAXやコピーを減らす、そういうところがデジタル化の第一歩じゃないですか。KPIを出して部門間で分かるようにしましたが、数値化して競争させすぎるのもよくないと思います。だから、できている人を明らかにする可視化、暗い雰囲気の可視化にならないように「明るい可視化にしよう」とよく言ってましたね。

浅沼 行政は外に情報を出すことを極端に心配すると思いますが、反対はなかったですか。

宮坂 「今、絶対やった方がいい」と言ったんですよ。初年度は「超ボーナスタイム」ですから。初年度は多分、ボロボロの数字が出ますよね。だから、2年目の数字は絶対上がるに決まっているんですよね。数字が上がると自己肯定感も上がるし、外からも「やればできるじゃないか」と言われます。

浅沼 行政だと減点法みたいな雰囲気がありますが、どう加点法に変えていくかというところで言うと、褒めることも大事ですよね。

宮坂 都庁は今、東京都の中と区市町村の2つのDX(デジタルトランスフォーメーション)アワードを走らせています。初年度から「できるだけ派手にやるんだ」と言って始めました。照れると、それが伝わっちゃうじゃないですか。2回目くらいからだんだん華やかな雰囲気になって来て、作品のレベルもだんだん上がってきています。

質問②「ユーザー視点のサービス開発の方法は?」

「合計3回、利用者の声を聞けるといいなとやっています」と語る宮坂 副知事。

(「合計3回、利用者の声を聞けるといいなとやっています」と語る宮坂 副知事)

浅沼 公共の中で市民のニーズや思いを政策やサービスに埋め込むために、どのような取り組みをしていますか。

宮坂 デジタルサービスをつくる10原則みたいなものを有識者の方々につくっていただきました。その1番目に書いてあるのが、「顧客視点でつくろう」です。行政は、提供者視点でデジタルサービスをつくっている傾向があるなと思います。そこは改めないといけないと思います。

そのため、「企画段階から利用者に聞こう」と言っています。次にUI(ユーザーインターフェイス)のプロトタイプができたところで1回、最後にリリース前に聞いて合計3回、利用者の声を聞けるといいなとやっています。

浅沼 先に東京都の方でそういうガイドラインがあったので、デジタル庁が立ち上がってから、後追いというかたちでやらせていただいています。

宮坂 みんなが知恵を乗せ合うというんですかね、1,700の自治体が1個ずつ良いガイドラインやプロダクトをつくると、それだけですごい数の知的財産が生まれるじゃないですか。だから、デジタル庁のみなさんとも一緒になって、いいガイドラインがあったらブラッシュアップしもらえればありがたいです。デジタル庁がつかってもっと良くしてもらったものを、それを東京都も使いたいし、道府県や区市町村の方々に再利用してもらって、もっと良くしていくというかたちで、ガイドライン一つとっても進化させていければと思っています。

質問③「公務員のキャリア改革は?」

浅沼 国の重要な施策として、人材確保に取り組まないと危ないと考えています。

民間企業では、働き方やキャリアパス、給与が見えていますが、公務員がどんな職業、職種でどんな仕事をしているかを発信して、分かるように見せていくのは大事だと思います。

宮坂 都庁の応募者は、この10年間で6割減っているんですよ。何もしないと、次の10年間で8割減になると言っています。本当に危機感を持っています。

浅沼 いろいろな意見があるとは思いつつ、デジタル庁がなぜできたかというと、今までの霞が関のルール、制度を民間の知見やノウハウを入れて変えていくというのが裏テーマにあったと思っています。若い府省庁職員が民間企業に転職するのではなく、他の省庁でこういう働き方ができるなど、公共の分野に新しいキャリアの文化ができればと思います。

宮坂 自分が望むキャリアに就きやすい環境をみんなでつくることを、デジタルの世界では特にやらなければと思いますね。

浅沼 公共のキャリアを踏むことでステップアップできるロールモデル、そういう人たちを増やしていかないといけないと思いますし、そこをつくっていくのが大事だと思っています。

(※所属・職名などは取材時のものです)

●後編は以下のリンクをご覧ください。

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