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農水省とこども家庭庁で聞いた GSSユーザーのリアルな声

新型コロナ禍を契機に広がったテレワーク。行政機関でも「GSS(ガバメントソリューションサービス)」の導入によって多様な働き方が可能になりました。

GSSをすでに導入している農林水産省、こども家庭庁のユーザーの声を紹介します。

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現地調査の情報をリアルタイム共有

これまでの行政では、LANシステムやネットワークを各府省庁が独自に整備してきたため、円滑なWeb会議の実施など省庁間の連携に課題を抱えていました。加えてセキュリティ対策の課題から、テレワークなどの柔軟な働き方への対応も遅れていました。

こうした課題を解消するために、デジタル庁が主体となって提供している政府共通の業務実施環境が「GSS(ガバメントソリューションサービス)」です。

具体的には、霞が関および全国の府省庁拠点やデータセンター、クラウド環境等を結んだアンダーレイ、オーバーレイネットワーク環境から、職員が業務で使用するノートPC等のハードウェア、OSやソフトウェア、エンドポイントセキュリティなどのアプリケーション環境まで、業務上のITインフラ全般を包括的に管理・提供しているサービスを「GSS」と呼んでいます。

GSSはすでに10府省庁に導入され、政府職員の働き方にさまざまな変化が起こり始めています。

先行事例の一つが、2022年10月から業務環境を順次GSSに移行してきた農林水産省での事例です。食品の製造現場での現地調査など、職場の外で業務をする場面が多い農林水産省へのGSS導入は、職員の働き方や業務の効率性に大きな変化をもたらしました。

農林水産省で米穀流通、食品表示の監視業務に携わる森川 健佑氏はこう語ります。

(GSS端末を活用した現場からのリアルタイムの情報共有について語る農林水産省 米穀流通・食品表示監視室 監視企画班 係員  森川 健佑氏)

「生産者や事業者のもとを訪れる機会が多い職員にとって、GSS端末である自分の業務用PCを現場に持って行って作業できるようになり、リアルタイムで情報共有できるようになりました。これは大きなメリットの一つだと思っています」

「事業者への聞き取りのメモ書きをその場で共有したり、現場の写真をすぐにチャットツールで共有したりできるようになりました」(農林水産省 森川氏)

かつては、用務先で新しい知見や情報を得た場合も、一度庁舎に戻ってからメールで関係者と情報を共有することが当たり前でした。

GSS環境に移行したことで、チャット機能を使った一斉配信や資料の共同編集ができるようになったことは大きなメリットを生みました。

GSS導入による業務効率化について語る農林水産省 情報管理室 情報企画官 間下 崇生氏の写真。

(GSS導入による業務効率化について語る農林水産省 情報管理室 情報企画官 間下 崇生氏)

農林水産省でGSSの導入を担当した間下 崇生氏が、GSS導入による業務効率化の事例を紹介します。

「業務上必要となる情報を複数の部署に問い合わせて情報を寄せてもらう業務があります。こうした業務は、これまでメールベースで対応することがほとんどでした。

場合によっては一つの案件に対して複数部署から合計100通以上のメールが寄せられ、それらの添付ファイルを一つひとつ開いて集計するような業務も発生していました。

しかし、GSS導入後はチャットで連絡を取り合えるようになり、100人が同時に同じファイルにデータを打ち込むことも可能になりました」(農林水産省 間下氏)

「GSSアンバサダー」が活用を後押し

GSSへの移行を進める省内チームとともに、草の根的にGSSの利活用を進める「GSSアンバサダー」も職員の中から募りました。

GSSアンバサダーは、同僚職員にGSSが提供するアプリケーションの使い方をサポートしたり、それらを活用した業務改善に関する知見を共有したりなど、省内でGSSのメリットを広め、DXを推進する役割を担っています。

この「GSSアンバサダー」制度は、新しい業務環境へのスムーズな移行を果たす上で重要な鍵になりました。

GSSアンバサダーの一人で、自らも農林水産省のGSS導入に携わった佐藤 柚弥氏はこう語ります。

「GSSアンバサダー同士でTeamsのチームをつくり、積極的に情報を共有しています。

たとえば業務自動化ツールの便利な使い方を教えあうチャネルや、GSS端末の使い方自体を相談するチャネルなどもあります」(農林水産省 佐藤氏)

省内にGSSのメリットを広める「GSSアンバサダー」について語る農林水産省デジタル政策推進チーム 業務改革推進班  佐藤 柚弥氏の写真。

(省内にGSSのメリットを広める「GSSアンバサダー」について語る農林水産省デジタル政策推進チーム 業務改革推進班  佐藤 柚弥氏)

GSSアンバサダーの活動を通じて、同僚の職員からもポジティブな反響が寄せられたそうです。

「『GSS、こんなことができるんだ』『GSSは素晴らしいね』という言葉をもらいましたね」(農林水産省 佐藤氏)

GSSがこども家庭庁発足に貢献

2023年に発足したこども家庭庁では、新設省庁ということもあり当初からGSSを導入しています。子供や子育てに関する政策を担う行政機関であることから、庁内でも積極的に働き方改革が進められ、その一環としてGSSを介したテレワークを積極的に取り入れています。

こども家庭庁で庁内の情報システムのマネジメント業務を担当する溝口 智紀氏はこう語ります。

「私も子育て中なので、子供になにかあった時には帰らなければいけなかったり、自宅からテレワークをしなければいけなかったりする状況が頻繁に起こります。

でも、GSS端末があれば、職場にいる時と変わらない業務環境に自宅からアクセスできます。子育てと仕事の両立という観点でも、かなり助かっています」(こども家庭庁 溝口氏)

GSS環境でテレワークがしやすくなったと語るこども家庭庁 総務課(情報システム係) 課長補佐 溝口 智紀氏の写真。

(GSS環境でテレワークがしやすくなったと語るこども家庭庁 総務課(情報システム係) 課長補佐 溝口 智紀氏)

こども家庭庁発足まであと一か月。プロジェクトが佳境を迎え、少ない日数で多くの業務をこなす必要があった当時の経験をこう振り返ります。

「非常に多くの業務をこなす必要があった中、職場だけでは仕事が終わらなかった時にも、GSS端末を使って自宅などから業務環境にアクセスし、場所を選ばず仕事を進められたことは、特に印象に残っています。

こども家庭庁を無事立ち上げることができたのはGSSのおかげだったと言っても過言ではないほど、非常に助かりました」(こども家庭庁 溝口氏)

日本の行政機関全体への普及を目指すGSS

すでに10府省庁に導入されたGSSを運用・管理するデジタル庁。2023年度は、約3万人の政府職員にGSS環境の導入・提供を実施しましたが、2024年度以降、さらに10万人規模の職員への提供を計画しています。さらには日本のすべての行政機関への普及も見据えています。

農林水産省のGSS導入に携わったデジタル庁の小関 祐介はこう語ります。

GSSが最終的に描いている姿について語るデジタル庁 主査 小関 裕介の写真。

(GSSが最終的に描いている姿について語るデジタル庁 主査 小関 裕介)

「GSS 環境の下、場所を選ばない働き方が実現できるようになったことで、すべての政府職員に『実務がやりやすくなった』『より良い政策⽴案ができるようになった』と思ってもらえるようになり、間接的ではありますが、国民のみなさまへのより良い行政サービスの提供という最終的なゴールにつなげていきたいですね」(デジタル庁 小関)

(GSSの今後の展望について語るデジタル庁 プロジェクトマネージャー  瀧山 稜太)

農林水産省のGSS導入のプロジェクトマネージャーを担当した瀧山 稜太は、GSSの今後の展望についてこう語ります。

「ゆくゆくは、各府省庁で働く30万人におよぶ政府職員の方々が、さらにセキュアかつシームレスにコミュニケーションがとれる業務環境にすることを目指します。それによって、行政の生産性向上につなげることが一番大きな展望です」

「また、GSSを構築する上ですべての業務を一括して一つのベンダーさんにお任せしてしまうと、開発後も依存し続けるベンダーロックインを避けるべく、端末の借入やネットワーク構築など、調達を適切な単位に分けて、複数の事業者さんに入札いただくことで、価格面も含めてより優れた提案について競争を促すことを目指します」(デジタル庁 瀧山)

より良い行政サービスを提供するための下支えとなるGSSを通じた行政業務の効率化や政府職員の柔軟な働き方は、これからも広がっていきます。

(※所属・職名などは取材時のものです)

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