自治体の悩みを解決するラーニングコミュニティ
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地方公共団体と国、または地方公共団体同士が直接対話し学び合うオンラインコミュニティ「デジタル改革共創プラットフォーム」。
2020年の運用開始当初から活用してきた自治体のひとつである、静岡県裾野市の副市長 及川 涼介氏、デジタル部 業務改革課 係長の中原 義人氏に、デジタル庁 シニアエキスパートの関 治之が話を聞きました。
オンラインコミュニティがもたらした変化とは?
地方公共団体または国の職員であれば誰でも参加できる「デジタル改革共創プラットフォーム(以下、共創プラットフォーム)」。2020年の運用開始以降、行政改革を後押しするようなアイデアの創出や課題解決に役立っています。
静岡県裾野市は、共創プラットフォーム発足当初から積極的に活用している地方公共団体のひとつです。地方公共団体の行政にどのような変化が起こったかを尋ねると、及川氏から次のような答えが返ってきました。
(共創プラットフォームの運営を担当するデジタル庁シニアエキスパートの関 治之(左))
「情報量が変わったと思っています。共創プラットフォームを眺めていると、職員の方々がどういうことに悩んでいるか、国からの指示をどう解釈するかの相談もあります。デジタル化の最前線で必要な情報が詰まっていると感じています」(及川氏)
(「共創プラットフォームは日常的な存在」と語る静岡県裾野市 副市長の及川 涼介氏)
裾野市のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に携わるデジタル部業務改革課係長の中原氏は、共創プラットフォームで情報取得のスピードが上がったと言います。
(裾野市のDXを担当する、デジタル部 業務改革課 係長の中原 義人氏)
「情報量の豊富さに加え、情報のスピードも違います。以前は近隣自治体に電話で情報取集していたものが、Slackで全国の事例をダイレクトに聞くことができるようになりました。共創プラットフォームによってスピード感が変わったと実感しています」(中原氏)
発言を個人の意見として取り扱うルール
共創プラットフォーム運用の過程で見えてきたのが、“学び合い”の場としてのラーニングコミュニティという役割です。
共創プラットフォームにおける発言は、組織を代表するものではなく個人の意見として取り扱うことがルールとして定められています。参加者の心理的安全性の確保が、現場の生の声や率直な意見が活発に投稿される学び合いの場創出の後ろ盾となっています。
関は、学び合いが共創プラットフォームの機能の柱となると考え、学び合いのサポート機能の拡充にも取り組んでいます。
「私たちが使う中でも感じるところですが、気軽なコミュニケーションができるチャンネルがあって、そこで悩みを吐露してもいい。それに対して、みなさんがリアクションや共感をしてくれます」(及川氏)
「悩みを投げかけた時に明確な答えが返ってこなくても、『違うよ』という反応がなければ信じていいんだとスタンプの並びで分かったりして、心の助けになります」(中原氏)
サービス新設をサポートしてくれた学び合いの場
「日本一市民目線の市役所」を目指す裾野市は、2023年12月、ご家族が亡くなった時の煩雑な手続きを大幅に簡素化し、窓口での待ち時間を短縮できる「おくやみワンストップ」サービスを新設しました。
構想を発表してから半年弱という、短期間でサービス開始にこぎつけています。その迅速な開発に共創プラットフォームが重要な役割を果たしたといいます。
「おくやみワンストップを検討する時にも共創プラットフォームを見て、他自治体はこうやっているんだ、こういうところで悩んでいるなど参考にさせてもらいました。共創プラットフォームが回り回って、市民の方にも役立っていると感じています」(及川氏)
(共創プラットフォームからリアルに広がった学び合いの場、福岡県久留米市で開催された勉強会)
共創プラットフォームというオンラインコミュニティが生み出した学び合いの場=ラーニングコミュニティを、リアルに展開させる試みも行われています。
2023年11月、関は福岡県久留米市で、「書かないワンストップ窓口」をテーマとしたリアルな勉強会を開催しました。
勉強会への出席者の多くは共創プラットフォームのユーザーで、実際に顔を合わせて行う学び合いの場は、盛り上がりを見せました。
「いろいろな市町村の話を聞けて、同じ悩みを共有できるところが有益でした」(福岡県大川市役所 西田 直光氏)
「それぞれの悩みに対して、それぞれの自治体が『ウチはこうやって解決しているよ』といった声を聞くことができました。非常に良い機会をいただいたと思います」(福岡県久留米市役所 鈴木 翔氏)
モチベーションを高め合い、日本の底上げにつなげたい
共創プラットフォームというラーニングコミュニティのさらなる活性化を目指し、デジタル分野以外の人々の参加や、さらに多くの行政関係者の参加が不可欠と考える関。
及川副市長は、職員数が減り、一人あたりの仕事量が増えているという地方公共団体の切実な状況を踏まえて、次のように話します。
「今、自治体は職員数も減ってきて人が少ない中で回さないといけません。制度も色々な制度が混ざり合って複雑でそれを紐解きながら改善してくのはやっぱり大変です。
そういう時に同じように悩んでいる、壁を乗り越えたという話を共有できるのは日本全体の底上げ、課題解決につながっていると思います」(及川氏)
行政におけるDXはデジタル領域の部署だけの力で実現できるものではありません。人々の生活をより良いものにするという目的を達成するには、行政に関わるすべての人々の知見やアイデアが必要です。
デジタル庁では、共創プラットフォームへのさらなる参加を募集しています。
(※所属・職名などは取材時のものです)
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- デジタル改革共創プラットフォーム|デジタル庁(※外部リンク)
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