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限られた人材で初動対応を乗り越える。マイナンバーカードを活用した避難者受付のデジタル化実証(三重県名張市)

2026年2月、デジタル庁は三重県名張市の協力のもと、避難所運営の実証を行いました。実証では、デジタル庁が開発した、マイナンバーカードなどを活用した避難者受付アプリが用いられました。

従来の手書きでの受付や手作業での避難者情報の集計を、マイナンバーカードなどの本人認証により自動的にデータ化することで、自治体職員や住民の負担軽減、初動対応の向上や円滑な支援が期待できます。

今回のデジタル庁ニュースでは、行政と市民が協力し、災害時の初動対応をデジタルで乗り越えるための名張市での実証の模様を取材しました。

●デジタル庁ニュースの動画では、実証当日の模様や参加した市民の声を紹介しています。ぜひご覧ください。

動画の内容をテキストで読む

<目次>

職員も被災し初動対応にあたれない。自治体が抱える避難所運営課題

デジタル庁ニュース動画の切り出し画像。向かって右手、左手奥の建物が倒壊した様子が写された写真に各種テロップが並ぶ。左上には「デジタル庁ニュース」のロゴ、「出典:令和6年能登半島地震アーカイブ」「提供:石川県」、右上には「初動をより速く正確に「避難者受付アプリ」」「2024年石川県」、中央下部には「能登半島地震 自治体職員も被災し初動対応にたれず」とのテロップが並ぶ。
(能登半島地震では、自治体職員も被災し初動対応にあたれなかった。出典:令和6年能登半島地震アーカイブ)

およそ7万人が暮らす三重県名張市。山地に囲まれ自然豊かな地域ですが、南海トラフ地震など大規模災害が発生した場合には集落の孤立などのリスクも抱えています。

市内には52か所の指定避難所がありますが、これまで災害時の受付は避難者が手書きで氏名などを記入し、職員が手作業で集計する方式が取られてきました。

さらに、2024年の能登半島地震では、石川県内の自治体職員も多く被災し、初動対応にあたれないなどの課題が明らかになりました。

名張市危機管理室の稲垣和幸係長は、自治体の災害対応についてこう説明します。

「(避難所の受付では)まず、記入作業に時間がかかります。効率よく避難所を運営して回していくためにどうすればよいのか、長らく課題として捉えていました」

「(能登半島地震の課題を踏まえると、今後は)避難した方々が力を合わせて避難所を運営して、そこに行政が支援していくような、限られた人材で年齢層を問わずに対応できる状況が必要になります」(名張市・稲垣係長)

こうした課題を踏まえ、名張市では避難所運営のデジタル化に関する実証に取り組みました。

ベージュ色の作業着を着用した稲垣係長が、やや斜め前方を向いて話している。背景には木目調のパネルと白い壁があり、壁には「収納庫」と書かれたプレートが掲示されている。
(名張市危機管理室の稲垣係長)

本人情報を自動的にデータ化。「マイナンバーカード避難者受付アプリ」を活用した実証

机の上に置かれたタブレット端末を、操作している写真。タブレットの画面には「マイナンバーカード遊覧者受付アプリ(ver 1.0.0)」の「本人確認書類選択画面」が表示されており、画面上部に「入所受付手続中」と赤字で示されている。画面中央には「受付する本人確認書類を選択してください」という見出しがあり、その下に「マイナンバーカード」「iPhoneのマイナンバーカード」「運転免許証」「受付用ICカード(マイナンバーカード・iPhoneのマイナンバーカード・運転免許証をお持ちでない方はこちらを選んでください)」の4つの青いボタンが2×2のグリッド状に配置されている。タブレットの背後から画面を示す指は「マイナンバーカード」ボタンを指し示している。
(タブレットに、本人確認書類を選ぶ画面が表示されている)

名張市が今回の実証で用いたのが「マイナンバーカード避難者受付アプリ」です。

このアプリはデジタル庁が開発したもので、マイナンバーカードなどをタブレットにかざすと、氏名や住所などの本人情報を自動的にデータ化できます。また、インターネット回線が遮断された状態でも使えるため、初動対応の向上や円滑な支援につながることが期待されます。

デジタル庁防災担当の神澤貴紀プロジェクトマネージャーは以下のように説明します。

「事前の避難所システムや防災システムが準備されていない自治体でも、このアプリを現地に持ち込めばすぐに避難所受付をデジタルで開始できます。発災後の自治体の職員や住民の負担、手書き受付による煩雑さを解決します」(デジタル庁・神澤)

木製のテーブルの上に置かれたタブレット端末に向かって、人物の右手がマイナンバーカード(※ダミーカード)をかざしている場面の写真。タブレット画面には『マイナンバーカード遮難者受付アプリ(ver 1.0.0)』と表示されており、『本人確認書類を読み取り中』という状態を示している。画面中央には『本人確認書類をカードリーダーにかざしてください』という案内文と、カードをカードリーダーにかざす操作手順を示したイラスト(ピンク色のカードを持つ手のイラストと、矢印、黒いカードリーダーのイラスト)が表示されている。
(タブレット端末にマイナンバーカード(ダミーカード)をかざす様子)

実証には、約20名の市民が参加。災害時に住民が主体的に避難所を運営できる体制を目指して、参加した市民は避難者役だけでなく受付役も担当しました。

受付での本人確認書類はマイナンバーカードやiPhoneのマイナンバーカード、そして運転免許証を用いました。また、何も持たずに逃げてきた人には、避難所の受付で受付用ICカードを発行し、避難者情報を登録します。

避難者役はマイナンバーカードをタブレットにかざして読み取ったあと、読み込まれた情報に間違いがないかを確認します。その後、同伴者の数や、けがの有無などの簡単な補足情報を入力すれば受付は完了です。

参加した市民からは 「簡単でした」「普通にタブレットやスマホを使っている人だったら、全然問題ないです」 という声が聞かれました。

集約したデータを災害対策本部と共有。避難者の状況をリアルタイムで把握

名張市での実証の様子。「医療・支援情報入力スタッフ」という名札を首から下げた人物がタブレット端末を操作し、避難者役と推認される着席した人物に聞き取りを行っている。二人の背後には、映像撮影をする人物が写っている。
(実証の様子)

また、受付時に聞き取れなかった詳しい配慮情報などは、受付後からでも追加で入力できます。こうして集められた避難者の情報はアプリで一括管理。アレルギーや持病などがある人を簡単に検索でき、適切な支援につなげることが可能です。

避難所で集約したデータは、市の災害対策本部に共有できます。災害対策本部は各避難所から集約したデータを避難者名簿として一覧化し、各避難所の人数や属性を把握することで、スムーズな支援につながります。

さらに、マイナンバーカードなどを使って避難所への出入りを確認するため、避難者や避難所の稼働状況を詳細に把握できます。

実証で、避難所運営へ主体的に関わる体験をした市民は 「毎年の防災訓練で避難所運営の訓練をする際にこのアプリを用いて慣れていけば、(発災後に)実践できそうです」 と話します。

名張市もアプリの活用に可能性を感じています。

「災害が起きると、実は避難所以外に避難している方の把握が非常に重要になります。(このアプリを活用して)ポータブル・オフラインで、(避難所以外に避難する方のもとに)こちらから出向いて把握することもできるのではないかと思いました」

「行政だけ、住民の方だけというイメージではなく、両方を足して合格点が取れる災害対応を取れるのが良いと考えています。今回の実証は、その一歩になりました」(名張市・稲垣係長)

人命救助や二次被害の防止、迅速な支援をするためにも大切な、災害時の初動対応。デジタル庁では今後も防災分野におけるデジタル化を進めていきます。

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