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時代に求められるアーキテクチャの設計とは? デジタル庁CA(チーフアーキテクト) 本丸達也

今、そしてこれからの時代に求められるアーキテクチャの設計とはどのようなものでしょうか。

デジタル庁 CA(チーフアーキテクト)の本丸 達也が、地域の現状や課題、未来のアーキテクチャのあるべき姿など、デジタル人材育成も視野に語りました。

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国の施策や実装に関わるためにデジタル庁へ

――デジタル庁に参画した経緯は?

本丸 外資系企業の経営層は “自分たちでつくってきた”エンジニアが多い一方、日本においては国も含めてエンジニア出身者が全体を指揮しているところはかなりレアだと思います。ものをつくって考える人たちが国の施策や実装に関わることができるため、自分も何らかの寄与ができるのではと思い参画しました。

――現在取り組んでいるプロジェクトは?

本丸 2025年以降に立ち上がる「公共サービスメッシュ」という、国・自治体の新しいデータ連携基盤の開発を進めています。

理想的なアーキテクチャづくりに大切なこと

外資系ソフトウェア企業勤務した後に起業した経歴を持つデジタル庁 CA(チーフアーキテクト)の本丸達也

(外資系ソフトウェア企業勤務した後に起業した経歴を持つデジタル庁 CA(チーフアーキテクト)の本丸達也)

――アーキテクチャとは?

本丸 アーキテクチャとは建築であれば構造そのものですね。概念で言えば、どういうレイヤーでできているのか、どういうところに接続点があるのか、どういうコンポーネントが必要なのかといった「抽象度の高い枠組み」という意味になると思います。例えばデータのアクセスを管理するために「アクセスは決められたところからしかしない」と決めることもアーキテクチャの一つです。

それぞれのプロジェクトに落とし込んでいくときには、もう少し具体にフォーカスする必要があり、「どういうAPIゲートウェイでどこに接続するのか」「どういう情報をメトリクスとして取るのか」というように解像度、具体性を持つ話になります。

このズームアウトした姿なのか、ズームインした姿なのかによって話を変えないといけない、つまり構造(アーキテクチャ)が、解像度の高いところ、低いところを自由に行き来できるかどうか、それがアーキテクチャそのものの説明になりますし、アーキテクトが担う役割でもあります。

――理想的なアーキテクチャのつくり方は?

本丸 技術的な観点で申せば、アーキテクチャをつくるとは「全体で最適を目指す」ということですが、簡単ではありません。まずはミクロがどうあるべきか、As-Isを調べること、それを積み上げる形で、少なくとも現状のアーキテクチャを定義します。色々なパーツがそろった上で、203Xをどうするか、直近であれば2025年をどうするか仕上げていきます。エンジニアの立場からの理想論で言えば、ミクロとマクロが同じような構成でできているのが一番つくりやすいです。

――技術以外のところでは?

本丸 ステークホルダーの調整が必要です。国、府省庁、自治体と数千のステークホルダーがいる中で、それぞれが望むものは個々にありますが、それらを全部通すと全体がバラバラになってしまいます。いろいろな形で調整しながらみなさんの腑に落ちるようにすることがアーキテクチャをつくる大きな役割だと考えています。

地域を輝かせるための解をさまざまな人たちと考えていきたい

――現在認識している大きな課題は?

本丸 各地域の現状です。人口の減少や(生産)年齢的な問題などはもう抑えられない流れになっているので、そうではない輝き方を見い出していくために、経済、生活の質という課題に対して、アーキテクチャで解が出せるかを考えています。ここが今、壁と言えば壁ですね。

ただ準公共といった分野でみなさんと一緒にやっていける形はないか、個人情報をしっかり分離、分散させて安心安全な形にできるかどうかなど、これからの課題解決のエンジンになるよう取り組んでいます。

本丸CAがノートパソコンを使いながら仕事をする様子

(本丸は、「私も地方で育ち、地方自治体にいたこともあるので、各地域の課題解決や未来にはひときわ関心があります」と語ります)

世の中が変わっても柔軟に対応するアーキテクチャを

――時代に求められるアーキテクチャとは?

本丸 10年ほどで今の基盤のアーキテクチャが変わる、完全にスイッチするという前提で設計する必要があると考えられています。アーキテクチャを不変なものとして設計すると、改造に大きなコストがかかってしまうからです。これはアーキテクトとしては避けるべきことだと思います。

今の建築の主流は解体のしやすさです。サステナブル、リユースを最優先にするアプローチです。こういった時代が変わっても有効に使えるというフレキシビリティが重要で、デジタル庁における設計にもこの思想が活かされています。

例えば、デジタル庁においてはAPIのゲートウェイと公共サービスメッシュという基盤の2つを持っていますが、たとえデータの中身が不揃いでも移行できるよう設計しています。このような思想であれば、世の中が変わっても適応できるし、移行や再設計のコストも小さくなると思っています。

――2030年代のアーキテクチャのあるべき姿は?

本丸 現在、一部を除き各自治体で個々のシステムをつくっており、それが1,700くらいあります。今後は、個々で考えるのではなく、どう共通化、共用化していくか、デジタル庁や地域のエンジニア、企業体が支援できるかどうかが重要になってきます。

――デジタル化の先にある未来はどのようなものと考えていますか?

本丸 今は東京一辺倒で、デジタル人材の集積に関して実質的にはシングルコアのような形で機能しています。そこをどうマルチコアにするか、場合によってはメニーコアにするのかが、私がいつも考えているテーマの一つです。少なくとも、2035年くらいの県庁所在地や中核都市においては、デジタル技術を世界水準で学べる未来を実現できたらいいなと思います。それには教育機関も必要です。

世の中のありとあらゆることはアーキテクチャから始まるので、情報工学の分野に限らず、人材を育て輩出する機関やその出口としての受け入れ企業について、みんなでしっかり考えていくと日本も変わり得るのかなと思います。

(※所属・職名などは取材時のものです)


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