多様なベンダーの参入が可能に! まったく新しいIT調達プラットフォーム「DMP」 デジタル庁 企画官 吉田泰己
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デジタル庁が運営するDMP(デジタルマーケットプレイス)によって公共IT調達はどう変わり、国民生活にどう影響するのか。
行政サービスのデジタル化に取り組むデジタル庁 企画官 吉田 泰己が紹介します。
IT調達の新しいカタチ、「DMP」開発を推進
――これまでに取り組んできたプロジェクトは?
吉田デジタル庁が立ち上がる前から、経済産業省で「GビズID」や「jGrants」といった事業者の方に向けた行政サービスのデジタル化を中心に取り組んできました。
――現在、関わっているプロジェクトは?
吉田 デジタル庁で取り組んでいるプロジェクトのひとつとしてDMPがあり、これは新しいIT調達の仕組みになります。これまでは、IT調達をする際に役所が仕様書を公開して公募をかけ、各事業者から提案していただく形で調達を進めてきました。
今回のDMPでは、事業者にどんなソフトウェア、サービスを提供しているかを、まずウェブサイト上で登録してもらいます。行政機関はカタログサイト上で調達仕様に合わせてその内容を検索し、対象となるソフトウェアを絞り込んで、結果をもとに調達に進めていくといった仕組みになります。
現在は実証事業としてカタログサイトのアルファ版を提供しています。
参考にしたのは、DMP先進国イギリスの事例
――DMP開発の進め方は?
吉田新しいIT調達の方式なので、どのような形が望ましいのかが重要となります。先行して行われているイギリスで実際の担当者と意見交換や、リサーチを進めて、具体的なスキームづくりを検討してきました。
2023年度はウェブのカタログサイトの実証版を構築し、2024年度後半には実証を踏まえ正式版のカタログサイトリリースし、これを使って調達できる仕組みをつくっていきます。
イギリスでも、以前は大手のITベンダーによる寡占が進んでおり、2009年時点では、調達の8割を18社のITベンダーが占めているといった状態にありました。
DMPを導入したことで、2018年時点のイギリスでは9割近くのDMP登録事業者が、ITスタートアップや中小ベンダーになりました。
イギリスでDMPを導入する際、アルファ版として実証的な仕組みをつくり、さまざまなフィードバックを得て次のバージョンにアップデートしていくという開発の仕方をしていたので、我々も参考にさせていただきました。
きっかけは、これまでのIT調達における課題の解決
――DMPを開発しようと思った理由は?
吉田 行政におけるIT調達は非常に煩雑で時間がかかるため、行政機関側にとっても事業者側にとっても、非常に大きな負担になっています。
行政機関側は調達仕様書の作成に、3か月から半年もの公告期間等を設けながら進めていかなくてはならず、手続についても非常に煩雑なものになっています。
また事業者側は競争入札になるため、選ばれなければ入札にかけた労力がビジネスにつながらず無駄になってしまう。その結果、限られた資本体力のある事業者しか参入しづらいといったことが課題としてありました。加えて、どの行政機関や自治体がどういった調達をするのかが分かりにくいため、営業コストも高くなる。
こうした行政機関、事業者双方の問題を解決するため、DMPの仕組みを開発しようということになりました。
DMP導入で、行政機関と事業者が共に得られるメリット
――DMPが広がることによるメリットとは、どういったものでしょう?
吉田 行政機関側にとっては、ウェブサイト上のカタログサイトから調達したいシステムの要件を検索で絞り込んでいけるので、早く希望のソリューションにたどり着けるというメリットがあります。
もうひとつのメリットは、今回、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)という、すでにクラウド上でパッケージ化されているソフトウェアを調達できるということです。
事業者側にとっては、調達プロセスが短くなることと、これまで各行政機関や自治体にリーチできなかった方々も、カタログサイトに載せることで幅広い行政機関・自治体の方に見てもらえるようになることがメリットになり、ビジネスにつなげやすくなるといったメリットがあると思います。
仕組みを変えることで、無駄なく公平なIT調達を実現
――DMPが各省庁や自治体、事業者に広がることで、未来はどう変わっていくと思いますか?
吉田 これまで行政機関のシステム調達は、どんなものも一から開発して調達する形が主流でした。今のようにクラウドを活用したソフトウェアが普及してきている中で、同じような機能をパッケージとしてみんなが使っていける世界が、DMPの導入を通じて広がっていくといいなと思っています。
また、新しい技術を持った事業者のサービスがプラットフォームに掲載されることによって、行政機関も時代に合わせて新しい技術を取り入れていける。それを通じて、市民の方々により良いサービスが提供できるように、調達の仕組みを変えていくことにつながればと考えています。
(※所属・職名などは取材時のものです)
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