RegTechが支えるインフラメンテナンスの未来
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人工知能(AI)、ドローン、デジタルツインをはじめとした技術革新が進むDX(デジタルトランスフォーメーション)の時代。
生活を支えるインフラメンテナンスにおいてはどのような変化が進行しているのでしょうか?
デジタル庁 シニアエキスパートの江崎 浩(えさき ひろし)に同庁参事官の須賀 千鶴(すが ちづる)が聞きました。
インフラメンテナンスをデジタル化する
デジタル庁では、アナログ規制を見直しデジタル化できるテクノロジーを「RegTech」と呼び、「技術革新」「システムの構築」など、デジタル社会へ向かうために既存手法の代替となるRegTechの開発や導入を促す取り組みを進めています。
なかでも大きなテーマの一つが、日常生活に欠かせない道路、橋、ダムなどの社会インフラです。これらの社会インフラにおいては、人口減少や少子高齢化の影響により、補修やメンテナンスなどに不可欠な専門家の人手不足が課題となっています。
こうした課題の解決策として期待されているのがインフラメンテナンスのデジタル化「インフラメンテナンスDX」です。
(デジタル庁参事官の須賀千鶴(左)と、デジタル庁シニアエキスパートの江崎浩(右))
精神的安定性をもたらしてくれるのもメリット
インフラメンテナンスDXと関係するアナログ規制の一例に、橋梁の点検があります。橋梁の堅牢性に甚大な影響をおよぼす恐れのあるひび割れや腐食の進行、危険性をチェックするという重要な作業です。
(ドローンを利用することで高所の点検作業を安心安全に行うことができるようになります)
これまでは、この点検を目視や打音で定期的に行うことが規制として明記されていました。
しかしRegTech導入によって、「危険を伴う橋梁上の点検ではドローンを飛ばして写真を撮る」、あるいは「高所ではセンサーを取り付けて常時監視を可能にする」などテクノロジーで代替することが可能になりました。そのメリットを、江崎はこう語ります。
「ひとつは、人と同じクオリティ、同じファンクションを機械が提供することができることですね。さらに、人がやらなくていいということは、その責任を人が持たなくてもいい。精神的安定性は重要なファクターで、それをデジタルが提供してくれるというわけです」(江崎)
道路工事の効率化の先にあるさらなるメリット
アナログ規制を見直し、インフラメンテナンスDXが実現した先に何があるのでしょうか。江崎は次のように語ります。
「道路工事をする際、アスファルトを剥がして土を掘っていくわけですが、浅い所はロボットで掘るものの、ある一定の深さになると作業員が掘ることになります。その理由は、地中にたくさん埋まっているガス管や水道管がどこに存在するか分からないからです。
しかし今では、配管の場所を観測するテクノロジーも開発されています。そもそも工事現場の写真を撮って共有しておくことで、どこに何の管があるかのデータを取ることができます。そうすれば、これまで人力を必要としていた作業を建設ロボットに任せられるようになるのです」(江崎)
デジタル化によって可能になったデータや経験の共有によって、さらなる効率化や新たな利益の創出にもつながると指摘します。さらに、以前とはまた異なる新しいルールをつくる必要も出てきます。
アナログ規制を見直し、ドローンやデジタルツインなどを活用したデジタル化を推進していくことで、作業の効率化はもちろんのこと、社会インフラを安心・安全な形で維持し、未来に受け継いでいくことが期待されています。
関係者のコミュニティ「RegTechコンソーシアム」
デジタル庁では、アナログ規制の見直しに取り組む関係者の意見交換や情報共有を目的とした活動を「RegTechコンソーシアム」として立ち上げ、そのコミュニティをコミュニケーションプラットフォーム「Slack(スラック)」上に開設しているほか、ピッチコンテストやシンポジウムなどのイベントも開催しています。
関係者による“直接対話”の場をつくることで、規制の見直しが技術の進展をもたらし、それがさらなる規制の見直しにつながる好循環を実現していくのです。
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(※所属・職名などは取材時のものです)
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