デジタルがひらく、事業者のこれから――手続の時間を、挑戦の時間に

このたびデジタル庁は、2025年度(令和7年度)の行政手続等の棚卸調査結果を公表しました。本調査は、オンライン化等による行政サービス全体の利便性向上に向け、行政手続等の実態を詳細に把握するために実施しているものです。

●調査結果は以下のリンクよりご覧ください。

デジタル庁は2021年度(令和3年度)の発足時にも同様の調査を実施しています。今回の調査結果からは、この4年間で行政手続のデジタル化が着実に進展したことが確認できる一方で、手続の種類や求められる添付書類によってオンライン化の状況には差があり、利用者の負担軽減という観点では依然として課題が残されていることがわかりました。

本稿では、棚卸調査の結果を振り返りながら、事業者向け行政手続のデジタル化がどこまで進んだのか、そして事業者が本来の事業活動により多くの時間を使える環境の実現に向けて、今後どのような取組が必要なのかをご紹介します。

<執筆者>
牧之瀬 泰志(国民向けサービスグループ 参事官)


この4年間で進んだ行政手続のデジタル化

デジタルファースト原則の達成状況 — オンライン化率の7年間の推移を示す折れ線グラフ。青色の実線がオンライン利用率(件数ベース)、オレンジ色の破線がオンライン化率(種類数ベース)を表している。 オンライン利用率(件数ベース)は、R1:約24億件・60.0%、R2:約25億件・61.0%、R3:約25億件・68.0%、R6:約43億件・79.5%、R7:約34億件・86.0%と、7年間で60%から86%へ大幅に上昇している。 オンライン化率(種類数ベース)は、R1:約5.6万種・12.0%、R2:約6.2万種・12.0%、R3:約6.4万種・31.9%、R6:約7.5万種・51.6%、R7:約7.6万種・53.7%と、R1〜R2は横ばいだったが、R3以降に急増し、7年間で12%から53.7%へと約4倍以上に増加している。
(図-1 デジタルファースト原則の達成状況 - オンライン利用率の7年間の推移。オンライン化率は、手続の種類数に占めるオンラインで実施できる手続の割合。オンライン利用率は、年間手続件数に占めるオンラインで実施された手続件数の割合。出典:デジタル庁『行政手続等の調査結果概要』(2026年8月26日)15ページ(PDF/4,720KB))

2021年度(令和3年度)に実施した同様の調査では、行政手続全体で約6万4,000種類の手続が存在し、年間の手続件数は25億件を超えることが明らかになりました。また、オンラインで実施できる手続の割合は、種類数ベースで31.9%、件数ベースで85%であった一方、行政手続全体のうち、実際にオンラインで行われた手続の割合(オンライン利用率)は68%にとどまっていました。

今回の調査では、行政手続全体のオンライン利用率は86.0%となり、この4年間でオンライン利用が着実に進展していることが確認されました。

オンライン利用を支える取組の一例として、法人共通認証基盤「GビズID」が挙げられます。GビズIDは、手続ごとに異なっていた認証を共通化し、事業者が一つのIDで複数の行政手続を利用できるようにする仕組みです。また、補助金申請システム「Jグランツ」に掲載されている補助金は2022年度(令和4年度)の453件から、2025年度(令和7年度)には1,663件まで増加しました。累計の利用事業者数も、27万者を超えています。

このように、事業者がオンラインで行政手続を利用するための基盤が整いつつあります。

オンライン化の次に見えてきた課題

一方で、今回の調査では、手続の種類や特性によってオンライン利用率に差があることもわかりました。

たとえば、事業者に関する手続で提出を求められることの多い登記事項証明書(商業)に着目すると、これを添付書類として求める手続のオンライン利用率は17.4%となっています。

2021年度(令和3年度)調査においても、行政機関が発行する証明書の中では、登記事項証明書(商業)を求める手続が多く存在することが確認されていました。

今回の調査結果は、オンライン利用が進んだ現在においても、法人情報の確認方法が引き続き重要な課題であることを示しています。

主な添付書類8種類のオンライン利用率と年間手続件数を比較した横棒グラフ。年間件数最多の登記事項証明書(商業)は8,142万回で、オンライン利用率は17.4%にとどまっている。
(図-2 主な添付書類のうち、登記事項証明書(商業)の提出を求める手続は年間手続件数が最も多く、そのオンライン利用率は17.4%となっている。出典:デジタル庁『行政手続等の調査結果概要』(2026年8月26日)13ページ(PDF/4,720KB))

こうした課題に対応するためには、申請方法をオンライン化するだけではなく、行政機関が既に保有する法人情報を手続間で活用できる環境を整備していくことが重要です。

そのための基盤となるのが法人ベース・レジストリです。法人ベース・レジストリは、法人の名称、所在地等、法人に関し、制度横断的に多数の手続で参照されるデータからなるデータベースです。

法人ベース・レジストリの活用が進めば、行政機関が法人番号をキーとして法人情報を参照できるようになり、事業者が手続ごとに登記事項証明書を取得・提出する負担の軽減が期待されます。

同じ書類を何度も提出しなくて済む環境へ

今回の調査では、オンライン申請の実現方法についても分析を行いました。
その結果、オンライン化されている手続を種類数ベースでみると、56.8%は行政機関が準備したシステム等を通じて実施されている一方、42.9%は電子メールによって実施されていることがわかりました。

オンライン申請の実現方法を示す複合グラフ。手続種類数18,075件のうち行政機関システム経由が56.8%、電子メールが42.9%を占め、システム別の手続種類数と年間手続件数を比較している。
(図-3 オンライン化されている手続のうち、手続種類数ベースでは42.9%は電子メールで行われている。出典:デジタル庁『行政手続等の調査結果概要』(2026年8月26日)7ページ(PDF/4,720KB))

このように、オンライン化された手続であっても、その実現方法は専用の情報システムだけではなく、電子メールによるものが相当数を占めています。

また、電子メールで受け付けている手続では、定款や決算書を含むさまざまな添付書類の提出が求められています。調査結果では、電子メール手続が求める添付書類のうち、「その他の添付書類」が約6割を占めるほか、登記事項証明書、定款等、決算書も一定数確認されました。

このうち、定款や決算書など、複数の手続で同じ内容の書類を提出する場合があるものについては、提出済みの書類を再利用できる環境を整えることが重要です。

デジタル庁では、Gビズポータルの電子ロッカー機能等を活用し、定款や決算書などの提出済み情報を複数の手続で再利用できる環境整備を進めています。

手続単位から事業者目線へ

さらに、事業者が直面する課題は、提出書類だけではありません。

事業者は、個別の行政手続を目的としているわけではなく、「会社を設立したい」「従業員を雇いたい」「補助金を活用したい」といった目的から行動します。

たとえば、カフェを開業する場合には、営業許可、税務や雇用関係の手続など、複数の行政手続が関係します。しかし、現在の行政手続は制度ごとに整理されているため、利用者は必要な手続を個別に探し、要件を確認する必要があります。

そこで、Gビズポータルでは、「カフェを開業したい」といった事業者の目的を起点として、必要な行政手続を横断的に案内する「手続ジャーニー」を提供しています。

手続単位ではなく、事業者の活動や目的に沿って必要な手続を案内することで、利用者が必要な情報にたどり着きやすい行政サービスの実現を目指しています。

事業者が「本業」に集中できる社会へ

2021年度(令和3年度)の棚卸調査では、行政手続全体の姿と、オンライン利用率や添付書類に関する課題が明らかになりました。

そして今回の調査では、この4年間でオンライン利用が進んだことが確認される一方で、事業者の負担軽減に向けて取り組むべき課題もより具体的に見えてきました。

オンライン化を進めることそのものが目的ではありません。

行政機関間の情報連携により、事業者が何度も同じ法人情報を提出しなくて済むこと。

一度提出した書類や情報を再利用できるようになり、同じ書類を繰り返し提出する負担が軽減されること。

事業者が必要な手続を探しやすくなり、目的に応じて必要な手続へ円滑にたどり着けること。

デジタル庁は、こうした取組を通じて、事業者が行政手続に費やす時間を減らし、本来の事業活動や新たな挑戦により多くの時間を使える環境の実現を目指していきます。


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