顧客に安心と便利を。保険・銀行・証券が実践するマイナンバーカード活用の最前線
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口座開設などの本人確認で、いまや1,300を超える企業がマイナンバーカードを活用しています。「事務処理費用が約5分の1に」「本人確認の時間が約半分に」といった効果も寄せられており、活用の幅は着実に広がっています。
デジタル庁は2026年8月28日、本人確認にとどまらずマイナンバーカードを"使い続ける"取組をテーマに、活用企業が集うコミュニティ「マイナンバーカード友の会」の会員向けイベントを開催しました。この記事では、登壇した保険・銀行・証券の3社が発表した活用事例を中心に、 デジタル庁が共有したマイナンバーカード活用の最新動向や参加者によるワークショップの模様などを紹介します。
<目次>
はじめに

(写真キャプション:挨拶するデジタル庁の上仮屋尚審議官)
イベントの冒頭、デジタル庁の上仮屋尚審議官(デジタル社会共通機能グループ・国民向けサービスグループ)が、参加者に向けて挨拶し、「先進企業の事例に触れ、皆さん同士で意見を交わしながら、何かを持ち帰っていただけたら」と、開催への期待を語りました。
マイナンバーカード活用の「いま」と「これから」(デジタル庁)

(写真キャプション:登壇するデジタル庁の小田部巧参事官補佐)
続いて、デジタル庁の小田部巧参事官補佐(国民向けサービスグループ)が登壇し、マイナンバーカードの民間利活用の最新動向と、今後の方針を説明しました。
「普及」から「利活用へ」

(マイナンバーカードの保有枚数は1億枚を超えた/デジタル庁)
マイナンバーカードが誕生して、約10年。マイナポイントやマイナ保険証などを機に取得が広がり、いまや保有枚数は1億枚を超えました。
「これまではどちらかというと『0→1』のフェーズでしたが、いまは『1→10』のフェーズに入ってきています。ようやく、利活用を本格的に進められるタイミングなのではないかと思っています」(小田部参事官補佐)
デジタル庁は、マイナンバーカードを活用する事業者を増やすとともに、生活のさまざまな場面で使える機会を広げていく方針です。利用シーンが広がれば利用者が増え、市場が大きくなり、さらに事業者も増える。そうした循環を目指しています。
導入した民間事業者から寄せられた効果

(導入企業からは業務効率化やコスト削減の効果が上がったとの声/デジタル庁)
マイナンバーカードを活用する公的個人認証サービス(JPKI)は、2026年7月末時点で1,355の事業者に導入されています。導入の効果としては、主に業務の効率化とコストの削減が挙げられます。
特に導入が進む金融・保険分野からは、「事務処理費用を約5分の1に削減できた」「本人確認にかかる時間を約半分にできた」「オンライン本人確認の1件あたりのコストが約9割減った」といった声が寄せられています。
「近年は活用の幅も広がり、新たなビジネスの芽につながったという声もいただいています」(小田部参事官補佐)
「半歩先から、生活を支えるカード」

(本人確認から、さまざまな民間サービスへと広がるマイナンバーカード活用の姿/デジタル庁)
マイナンバーカードの価値は、行政手続にとどまらず、医療や金融など、さまざまな民間領域へと広がりつつあります。
「これまでマイナンバーカードは『デジタル時代のパスポート』と表現されてきました。ですが、これからは『半歩先から、生活を支えるカード』と言ってもいいのではないかと考えています」(小田部参事官補佐)
こうした活用をさらに後押しするのがスマートフォンです。2026年8月には「マイナアプリ」の提供が始まりました。このアプリを使えばスマートフォンに搭載したマイナンバーカードで、さまざまなサービスの本人確認ができます。iPhoneではすでに利用でき、2026年秋頃にはAndroid端末にも対応が広がる予定です。カードを取り出さなくても、スマートフォンひとつで手続を済ませられる。そうした使い方が、少しずつ広がっていきます。
「これからはカードだけでなく、スマートフォンを持って日常的に活用していく。そんなシーンをつくっていけたらと思っています」(小田部参事官補佐)
マイナンバーカードと共に歩むライフイベント(明治安田生命保険相互会社)

(写真キャプション:登壇する明治安田生命保険相互会社の小谷修一氏)
明治安田生命保険相互会社の小谷修一氏(事務サービス企画部 事務サービス企画グループ グループマネジャー)は、生命保険の手続にマイナンバーカードを活用する取組を紹介しました。
生命保険の手続を支えるマイナンバーカード

(人生の節目ごとに生命保険の手続が発生/明治安田生命保険相互会社)
生命保険は、加入から長く続く契約です。その間には、改姓や入院時の給付金請求、引越しによる住所変更など、人生の節目ごとにさまざまな手続が発生します。
「日常や人生の節目で使える場面が広がっているマイナンバーカードと、生命保険には、重なる部分が大きいと感じています。普及率が高まるなか、生活者に近いところで利用シーンをつくっていくことが、これから重要になると考えています」(小谷氏)
手続の負担を減らす、具体的な活用

(マイナンバーカード等を活用したさまざまなサービス/明治安田生命保険相互会社)
こうした考えのもと、同社ではすでにいくつかの場面で、マイナンバーカードやマイナポータルを活用しています。
例えば、住所変更の手続です。利用者があらかじめ登録しておくと、引越しによる住所の変更が、同社の登録情報にも自動で反映されます。転居のたびに手続をする負担が軽くなります。
年金の受け取りにも活用しています。従来は、年金を受け取り続けるために、利用者自身が定期的に現況を届け出る必要がありました。公的個人認証を通じて住民情報を確認することで、この手続が不要になります。
死亡保険金についても、これまでは利用者からの問い合わせを受けて案内していましたが、マイナンバーカードを通じて、同社から先に案内できるようになります。
また、健康診断の結果を提出するとキャッシュバックを受けられる特約でも、マイナポータルとの連携を取り入れました。結果を写真に撮って送る代わりに、マイナポータルからデータを連携することで、提出の手間を減らせます。
「保険の手続は、面倒だと感じている方が多いと思います。マイナンバーカードをしっかり使えば、もっと便利にできるのではないかと考えています」(小谷氏)
マイナンバーカードの活用を、利用者に広げる取組

(マイナンバーカードの活用サービスを案内する周知ツール/明治安田生命保険相互会社)
取組を始めた当初は、マイナンバーカードを持つ人がまだ少なく、「便利そうだけれど、そもそもよく分からない」という声も多く聞かれたそうです。
そこで同社は、デジタル庁の協力のもと、「マイナンバーカードまるわかりパンフレット」[PDF]を作成。全国の営業職員や事務職員が、手続を手伝う際に、カードを使うと便利になることをあわせて案内してきました。カードを持つ人が増えた現在は、内容を新しくしたA3判のリーフレットを社内に展開しています。
こうした取組により、活用は着実に広がっています。住所・氏名変更を自動で反映またはご案内するサービスの利用者は約35万人、年金の自動支払サービスは約4万件、マイナポータルから健康診断結果を提出する仕組みは約1万9,000件利用されています(いずれも2026年3月時点の累計)。
同社が見据えるのは、さらに先の活用です。マイナポータルを活用し、保険の加入時における手続の高度化や、給付金等の請求漏れが発生しないような仕組みを構築すること。さらには、行政手続をすると保険の手続もまとめて完了する「ワンストップ手続」の実現です。
「マイナンバーカードとマイナポータルの活用は、これから当たり前になっていく。社内でも、そうした認識が共有されています」(小谷氏)
ATMから広がる、暮らしに寄り添うサービスプラットフォーム(株式会社セブン銀行)

(写真キャプション:登壇する株式会社セブン銀行の三浦龍矢氏)
株式会社セブン銀行の三浦龍矢氏(ATM+企画部グループ長)は、ATMを通じたマイナンバーカードの活用について紹介しました。
マイナンバーカード活用を支えるATMプラットフォーム

(ATMをマイナンバーカードの手続に活用/株式会社セブン銀行)
セブン銀行では、ATMをマイナンバーカードの手続にも活用しています。その基盤となるのが、全国に広がるATM網です。現在の設置台数は約2万8,000台で、今後4年ほどかけて約4万4,000台まで広げる予定です。設置場所はコンビニだけでなく、駅や空港、商業施設などにも及びます。
「ATMは現金を引き出す場所というイメージがあるかもしれませんが、いまは暮らしに身近なサービスを提供する場へと進化しています」(三浦氏)
セブン銀行がマイナンバーカードに関わり始めたのは、2020年のマイナポイントの申込対応でした。以来、活用の幅を段階的に広げてきました。
提供するマイナンバーカード関連サービス

(マイナポータルと連携した情報連携サービス/株式会社セブン銀行)
セブン銀行のATMには、マイナンバーカードを読み取る機能が備わっており、これを使ったサービスが提供されています。
一つが、健康保険証利用の申込です。マイナンバーカードを健康保険証として使うには、事前の登録が必要になります。パソコンやスマートフォンから申し込む場合は、カードの読み取り機器やアプリが必要ですが、セブン銀行のATMなら、マイナンバーカードを持参し、暗証番号を入力して申し込めます。
「利用者がアプリなどを準備する必要がないだけでなく、自治体や医療機関の窓口の負担軽減にもつながっていると考えています」(三浦氏)
各種の手続に必要な所得情報などをATMから事業者へ直接データで届けるマイナポータル情報連携サービスも提供しています。従来は利用者が自治体などから所得証明書を取得し、事業者に提出する必要がありましたが、このサービスでは利用者の同意のもと、マイナポータルを経由して、自治体が保有する所得情報を事業者へ直接連携することができます。
「書類の取得や提出の手間がなくなるうえ、記入漏れや偽造・改ざんのリスクも抑えられます。利用した事業者からは、『正確な情報を受け取れる』『作業の工数が減った』といった声をいただいています」(三浦氏)
ATMを活用した、これからの取組

(eKYCとATMを組み合わせた本人確認を検討/株式会社セブン銀行)
セブン銀行は、ATMを使った本人確認の仕組みづくりにも取り組んでいます。スマートフォンによるオンライン本人確認が広がるなか、ATMという身近な拠点でも同様の手続ができるようにすることで、より多くの人が利用しやすい環境を整える狙いです。
具体的には、eKYCサービスで生成したQRコードをATMで読み取り、続けてマイナンバーカードを読み取ることで本人確認を進める仕組みを検討しています。スマートフォンとATM、それぞれの特性を生かした選択肢を用意することで、利用者が自分に合った方法で手続を完了できるようにする考えです。
「ウェブやアプリを置き換えるのではなく、ATMという新たな選択肢のある世界を構築していきたいと考えています」(三浦氏)
口座開設だけじゃない!不正取引対策でのマイナンバーカードの活用法(マネックス証券株式会社)

(写真キャプション:登壇するマネックス証券株式会社の法貴大輔氏)
マネックス証券株式会社の法貴大輔氏(システム開発一部 第一プロダクトグループ 認証チーム・チームリーダー)は、不正取引対策としてのマイナンバーカードの活用について紹介しました。同社では口座開設時の本人確認に加え、2026年から新たな場面での活用を始めています。
深刻化する不正取引

(証券口座の不正アクセスは2025年4月にピークを迎えた/マネックス証券株式会社)
証券業界では近年、第三者が他人の口座に不正にアクセスし、勝手に取引を行う被害が問題となってきました。法貴氏は、金融庁のデータを示しながら、その深刻さを説明しました。
「ピークだった2025年4月には、6,000件近い不正アクセスが検知され、そのうち約3,000件が実際の不正な取引にまで至りました。金額としても、非常に大きな被害が発生しています」(法貴氏)
業界全体で対策が進み、状況は落ち着いてきています。しかし、警戒を続ける必要性を法貴氏は強調します。
「生成AIを使えばフィッシングサイトも簡単につくれてしまう時代です。攻撃者側もそれを使えるため、対策を常にアップデートし続けなければなりません」(法貴氏)
対策の要となった「パスキー」

(実施した不正取引対策(一部)/マネックス証券株式会社)
こうしたなか、同社はいくつかの対策を重ねてきました。ログイン時などにワンタイムパスワードの入力を必須にしたほか、利用者が不安を感じたときに取引を一時停止できる機能も設けています。
なかでも鍵となったのが、パスワードに代わる新しい認証の仕組み「パスキー」の導入です。パスキーは、仮に偽のサイトへ誘導されても認証が成立しないため、フィッシングに強いことが特徴です。
ただし、弱点もありました。登録さえ済めば安全に使えますが、その「登録するとき」の本人確認が弱いと、攻撃者に不正にパスキーを登録されてしまうおそれがあったのです。
「パスキーだけでは、足りないピースがありました。それが、登録するときの本人確認です」(法貴氏)
マイナンバーカードを活用した本人確認の強化

(パスキー登録時の本人確認にデジタル認証アプリ (※) を取り入れた仕組み/マネックス証券株式会社)
この弱点を補うために活用したのが、マイナンバーカードでした。同社は、パスキーを登録する際の本人確認に、デジタル庁のデジタル認証アプリ (※) のAPIを取り入れました。
(※) デジタル認証アプリはマイナアプリに統合されました。これに伴い、デジタル認証アプリサービスは「デジタル認証サービス」へ呼称を変更しました。行政機関や民間事業者の方は、デジタル認証サービスを引き続きご活用いただけます。
同社が利点と感じた点は二つあると法貴氏は話します。一つは、利用者のスマートフォンにすでに入っている「マイナアプリ」で認証できること。多くの人がすでに利用しているアプリのため、あらためて別のアプリを用意する必要がありません。もう一つは、APIの設計が新しく、金融機関に求められる高い安全性に配慮されている点です。
今後は、出金先口座の変更やオンラインでのアカウント復旧など、より慎重な本人確認が求められる手続にも活用を広げることを検討しています。
「口座開設にとどまらず、日常的な場面でもマイナンバーカードを使えるようにしていきたいと考えています」(法貴氏)
業界を越えて、マイナンバーカード活用のヒントを共有

(ワークショップの様子)
3社の発表に続いて、トークセッションと質疑応答、参加者によるワークショップに移りました。業界の垣根を越えて、活発な意見が交わされました。
質疑応答では、多くの企業に共通する関心事が話題に上りました。
「社内でマイナンバーカードの活用を進めるうえで経営層の理解をどう得るか」という問いに対して、明治安田の小谷氏は「サービスを使ったお客さまの『便利だ』という声を伝えることが、後押しになる」と回答。マネックス証券の法貴氏は、「コストの削減につながるなど、具体的な効果を示すことも一つの方法」とコメントしました。
デジタルに不慣れな高齢の利用者への対応も話題に。小谷氏は営業・事務職員による対面のサポートに加え、分かりやすいリーフレットや動画教材を用意していることを紹介しました。
ワークショップでは、参加者がグループに分かれ、「マイナンバーカードの使い倒しアイデア」を出し合いました。
例えば、次のようなアイデアです。
- 高齢者の入退院や老人ホームへの入居に伴う手続を、マイナンバーカードで簡素化する
- 親から子へ、アカウントやデジタル資産を引き継ぐ
- 病院ごとに分かれている医療情報を連携し、受診後にスムーズに保険金を受け取れるようにする
業界の異なる参加者が知恵を持ち寄り、暮らしの課題を解決する多彩な発想が生まれました。
なお、当日のイベントの内容はグラフィックレコーディングでも記録されました。3社の事例から官民連携まで、この日の学びを一枚にまとめています。

(グラフィックレコーディング:「マイナンバーカード友の会ミートアップ!!」当日の記録/デジタル庁)
おわりに:活用を検討する事業者の皆さまへ

(イベント参加者の集合写真)
デジタル庁は、マイナンバーカードの活用を検討する事業者の皆さま向けに各種情報を公開しています。
政府の取組方針やカードの機能など基本情報をまとめた資料のほか、本人確認を行う公的個人認証サービス(JPKI)の技術情報、すでに導入した事業者の事例一覧などを確認できます。また、自社に近い業種の取組を探すことも可能です。詳しくは、デジタル庁ウェブサイト「民間事業者向けマイナンバーカード活用情報」をご覧ください。
デジタル庁では、今回のイベントをきっかけに、マイナンバーカードを活用した新たなサービスや取組の検討が広がり、業界を越えた連携が生まれることを期待しています。
マイナンバーカードの利活用に関心のある自治体・民間事業者の皆さまは、ぜひ「マイナンバーカード友の会」にご加入ください。
●「マイナンバーカード友の会」加入に関する詳細は、以下のリンクをご確認ください。
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