顧客に安心と便利を。保険・銀行・証券が実践するマイナンバーカード活用の最前線

口座開設などの本人確認で、いまや1,300を超える企業がマイナンバーカードを活用しています。「事務処理費用が約5分の1に」「本人確認の時間が約半分に」といった効果も寄せられており、活用の幅は着実に広がっています。

デジタル庁は2026年8月28日、本人確認にとどまらずマイナンバーカードを"使い続ける"取組をテーマに、活用企業が集うコミュニティ「マイナンバーカード友の会」の会員向けイベントを開催しました。この記事では、登壇した保険・銀行・証券の3社が発表した活用事例を中心に、 デジタル庁が共有したマイナンバーカード活用の最新動向や参加者によるワークショップの模様などを紹介します。

<目次>

はじめに

デジタル庁の上仮屋尚審議官がマイクと原稿を持って挨拶をしている様子。後ろのスクリーンには「デジタル庁よりご挨拶」「審議官 上仮屋尚」の文字が確認できる。
(写真キャプション:挨拶するデジタル庁の上仮屋尚審議官)

イベントの冒頭、デジタル庁の上仮屋尚審議官(デジタル社会共通機能グループ・国民向けサービスグループ)が、参加者に向けて挨拶し、「先進企業の事例に触れ、皆さん同士で意見を交わしながら、何かを持ち帰っていただけたら」と、開催への期待を語りました。

マイナンバーカード活用の「いま」と「これから」(デジタル庁)

デジタル庁の小田部巧参事官補佐がマイクを持って登壇している様子。小田部参事官補佐の右側にはスクリーンがあり、「インフラを整えてきた10年を経て、本格的に利活用を拡大するフェーズへ」という文字が見える。また、小田部参事官補佐の話を聞く参加者の後ろ姿が5人ほど確認できる。
(写真キャプション:登壇するデジタル庁の小田部巧参事官補佐)

続いて、デジタル庁の小田部巧参事官補佐(国民向けサービスグループ)が登壇し、マイナンバーカードの民間利活用の最新動向と、今後の方針を説明しました。

「普及」から「利活用へ」

「マイナンバーカードの現在地」と題したスライド。スライドの上部に「インフラを整えてきた10年を経て、本格的に利活用を拡大するフェーズへ。」とあり、その下に「マイナポイント事業、マイナ保険証が起爆剤となり、2025年末に1億枚(保有率約80%)を超えた。インフラ整備のフェーズ(0→1)から、ようやく利活用を拡大するフェーズ(1→10)へ。(令和8年7月末時点の保有枚数は約1億418万枚、人口に対する割合は84%)」と書かれている。スライドの下半分は「マイナンバーカード交付/保有枚数」のグラフ。2016年から2026年までが横軸、0枚から12000枚の枚数が縦軸。
(マイナンバーカードの保有枚数は1億枚を超えた/デジタル庁)

マイナンバーカードが誕生して、約10年。マイナポイントやマイナ保険証などを機に取得が広がり、いまや保有枚数は1億枚を超えました。

「これまではどちらかというと『0→1』のフェーズでしたが、いまは『1→10』のフェーズに入ってきています。ようやく、利活用を本格的に進められるタイミングなのではないかと思っています」(小田部参事官補佐)

デジタル庁は、マイナンバーカードを活用する事業者を増やすとともに、生活のさまざまな場面で使える機会を広げていく方針です。利用シーンが広がれば利用者が増え、市場が大きくなり、さらに事業者も増える。そうした循環を目指しています。

導入した民間事業者から寄せられた効果

「カード利活用班の実績と、創出した経済効果」と題したスライドで、「マイナンバーカードを活用した1355社が得た、3つの経済効果。」と書かれている。「導入した民間事業者からは、業務効率化、コスト削減、新たなビジネスの芽にも繋がった、と経済的な効果が上がったとの声」とある。スライドの下部は棒グラフ。「JPKI導入事業者数」とあり、2024年3月は543社、2025年3月は716社、2026年3月は1246社、2026年7月は1355社。1355の棒グラフのところから3つの吹き出しが出ており、導入の効果として「業務効率化:対面・非対面ともに迅速・確実な確認が可能に。より少ないリソースで、多くの顧客を対応」「コスト削減:共通インフラの活用で投資コストの削減」「新たなビジネスの芽も:基本4情報をはじめとした属性情報を活用した新セグメント、新サービスの提供が可能に」が挙げられている。
(導入企業からは業務効率化やコスト削減の効果が上がったとの声/デジタル庁)

マイナンバーカードを活用する公的個人認証サービス(JPKI)は、2026年7月末時点で1,355の事業者に導入されています。導入の効果としては、主に業務の効率化とコストの削減が挙げられます。

特に導入が進む金融・保険分野からは、「事務処理費用を約5分の1に削減できた」「本人確認にかかる時間を約半分にできた」「オンライン本人確認の1件あたりのコストが約9割減った」といった声が寄せられています。

「近年は活用の幅も広がり、新たなビジネスの芽につながったという声もいただいています」(小田部参事官補佐)

「半歩先から、生活を支えるカード」

「マイナンバーカードが支える、個人に寄り添う、安全・便利なデジタル社会(イメージ)」と題したスライド。スライド上部に「行政手続きから、半公共領域、そして民間ビジネスへ」とある。スライド左下に「自分を証明するマイナンバーカード」「対面でもオンラインでもICチップで確実に」との記載があり、そこから放射状に矢印が伸びており、「Before(課題)→Solution(解決策)→Future(将来像)」の順に記載がある。例えば、「役所に赴き、窓口にて手書申請」の課題に対しては、「マイナンバーカード・マイナポータル導入」の解決策、e-TAX→パスポート申請→給付金のお知らせ・プッシュ型給付、引越手続→子育支援手続→AMコンシェルジュ、介護手続→被災者支援→サービス案内といった記述が見られる。次の「サービスごとに、カードがバラバラ。なりすまし被害も心配」という課題に対しては、「マイナンバーカード導入」の解決策、マイナ保険証→マイナ免許証、お薬手帳→マイナ救急→診察券等もマイナンバーカード一枚へ、予防接種済証→図書カード→在留カード→国家資格証→民間会員証や社員証への応用といった記述が見られる。また、「スマホ搭載:いつでも使える、カードかざし不要、生体認証で簡単」という囲みも併記されており、「行政カード化:各種資格証等として利用したり、様々な公的サービスを受けたりすることを可能に」とも書かれている。最後に「事業者ごとにバラバラ。なりすまし被害も心配。手間やコストもかかる」という課題に対しては、「マイナンバーカード機能の民間開放」という解決策から、銀行・証券の申込・各種手続→マッチングアプリ→ライブイベントチケット転売防止、携帯電話申込・各種手続→古物取引、オークション→プロスポーツ等のファンサービス、キャッシュレス決済・本人確認→年齢確認等→シェアエコの本人確認→ゴルフ場顔認証チェックイン、地域振興連携、ネット仮想空間上の本人確認、と書かれている。「安全・便利な民間ビジネス:安全かつ便利で効率的な取引等を可能とする手段として」と書かれている。
(本人確認から、さまざまな民間サービスへと広がるマイナンバーカード活用の姿/デジタル庁)

マイナンバーカードの価値は、行政手続にとどまらず、医療や金融など、さまざまな民間領域へと広がりつつあります。

「これまでマイナンバーカードは『デジタル時代のパスポート』と表現されてきました。ですが、これからは『半歩先から、生活を支えるカード』と言ってもいいのではないかと考えています」(小田部参事官補佐)

こうした活用をさらに後押しするのがスマートフォンです。2026年8月には「マイナアプリ」の提供が始まりました。このアプリを使えばスマートフォンに搭載したマイナンバーカードで、さまざまなサービスの本人確認ができます。iPhoneではすでに利用でき、2026年秋頃にはAndroid端末にも対応が広がる予定です。カードを取り出さなくても、スマートフォンひとつで手続を済ませられる。そうした使い方が、少しずつ広がっていきます。

「これからはカードだけでなく、スマートフォンを持って日常的に活用していく。そんなシーンをつくっていけたらと思っています」(小田部参事官補佐)

マイナンバーカードと共に歩むライフイベント(明治安田生命保険相互会社)

明治安田生命保険相互会社の小谷修一氏がマイクを持って登壇している様子を写した写真。小谷氏の右側にはスクリーンがあり、「マイナンバーカード活用は「普及」から「利用シーン拡大」へ」「マイナンバーカードは社会に広く普及し、今後は「持っている」から「便利に使える」段階へ」「民間企業が生活者に近い利用シーンを作ることが重要」といった文字が見える。また、マイナンバーカードの保有状況について(令和8年7月末時点)は、人口に対する保有枚数84.0%とも書かれている(人口123,767,642人、保有枚数104,184,326枚)。
(写真キャプション:登壇する明治安田生命保険相互会社の小谷修一氏)

明治安田生命保険相互会社の小谷修一氏(事務サービス企画部 事務サービス企画グループ グループマネジャー)は、生命保険の手続にマイナンバーカードを活用する取組を紹介しました。

生命保険の手続を支えるマイナンバーカード

「ライフイベントと生命保険手続き」と題したスライド。スライド上部に「マイナンバーカードの活用は、日常・人生の節目に拡大」「生命保険の手続きも、ライフイベントと密接に関係」と書かれており、下部に文字とイラストを組み合わせた図が挿入されている。イラストのタイトルは「マイナンバーカードと共に歩むライフイベント」。上から「公共機関等」、人のライフイベント、「生命保険の手続き」という3つの軸があり、それぞれの項目の関連性が視覚化されている。出生〜就職にかけては、「預貯金口座の開設に銀行や郵便局へ」(公的機関等)、「生命保険への加入」(生命保険の手続き)とあり、結婚の上には「アルバイト、パート、就職のときに職場へ」(公的機関等)」、「改姓手続き」(生命保険の手続き)。出産〜育児にかけては、「児童手当や出産育児一時金の申請で市区町村や健康保険組合へ」(公的機関等)、「健診結果の提出」(生命保険の手続き)とある。マイホーム〜定年退職/再就職にかけては、「税金の申告で税務署や市区町村へ」、「資産運用の手続きで銀行や証券会社へ」(公的機関等)、「給付金の請求」「住所変更手続き」(生命保険の手続き)と書かれている。年金受取開始のところには「年金給付の手続きに日本年金機構へ」(公的機関等)、「年金請求手続き」(生命保険の手続き)とあり、死亡のところには「死亡保険金の請求」(生命保険の手続き)、その先の相続のところには「相続税の申告などで税務署へ」(公的機関等)とある。
(人生の節目ごとに生命保険の手続が発生/明治安田生命保険相互会社)

生命保険は、加入から長く続く契約です。その間には、改姓や入院時の給付金請求、引越しによる住所変更など、人生の節目ごとにさまざまな手続が発生します。

「日常や人生の節目で使える場面が広がっているマイナンバーカードと、生命保険には、重なる部分が大きいと感じています。普及率が高まるなか、生活者に近いところで利用シーンをつくっていくことが、これから重要になると考えています」(小谷氏)

手続の負担を減らす、具体的な活用

「当社サービスの全体像」と題したスライド。左側に当社サービス、右側に活用のポイントとして表が書かれている。終身(有期)年金自動支払サービス/死亡保険金の請求案内:公的個人認証サービスを活用し、カードの有効・失効情報から現況確認を実施。自動住所変更・氏名変更のご案内サービス:公的個人認証サービスを活用し、最新4情報を取得することで、手続きの自動化・ご案内を実施。マイナで“けんしん”提出:マイナポータルを活用し、お客さまの健康診断書結果を、データで連携。マイナンバーカード読み取りによる本人確認(※2027年3月展開予定):公的個人認証サービスを活用し、簡単・確実な本人確認を実施。
(マイナンバーカード等を活用したさまざまなサービス/明治安田生命保険相互会社)

こうした考えのもと、同社ではすでにいくつかの場面で、マイナンバーカードやマイナポータルを活用しています。

例えば、住所変更の手続です。利用者があらかじめ登録しておくと、引越しによる住所の変更が、同社の登録情報にも自動で反映されます。転居のたびに手続をする負担が軽くなります。

年金の受け取りにも活用しています。従来は、年金を受け取り続けるために、利用者自身が定期的に現況を届け出る必要がありました。公的個人認証を通じて住民情報を確認することで、この手続が不要になります。

死亡保険金についても、これまでは利用者からの問い合わせを受けて案内していましたが、マイナンバーカードを通じて、同社から先に案内できるようになります。

また、健康診断の結果を提出するとキャッシュバックを受けられる特約でも、マイナポータルとの連携を取り入れました。結果を写真に撮って送る代わりに、マイナポータルからデータを連携することで、提出の手間を減らせます。

「保険の手続は、面倒だと感じている方が多いと思います。マイナンバーカードをしっかり使えば、もっと便利にできるのではないかと考えています」(小谷氏)

マイナンバーカードの活用を、利用者に広げる取組

「当社サービスの周知に向けて」と題したスライド。スライド上部に「当社サービス等に関する周知ツールを作成。営業職員、事務サービス・コンシェルジュ(※当社営業職員ともにお客さまを訪問し、お手続きサポートをや各種サービスのご案内を行なう事務職員の職務名称)がお客さまへご案内」と書かれている。中央にそれぞれのビジュアルと共に紹介があり、左側は「マイナンバーカードまるわかりパンフレット」、中央は「マイナンバーカードまるわかりリーフレット」。この2つは「デジタル庁様の協力のもと作成」と書かれている。そして右側は「マイナンバーカードを活用したサービスご紹介動画」が紹介されている。
(マイナンバーカードの活用サービスを案内する周知ツール/明治安田生命保険相互会社)

取組を始めた当初は、マイナンバーカードを持つ人がまだ少なく、「便利そうだけれど、そもそもよく分からない」という声も多く聞かれたそうです。

そこで同社は、デジタル庁の協力のもと、「マイナンバーカードまるわかりパンフレット」[PDF]を作成。全国の営業職員や事務職員が、手続を手伝う際に、カードを使うと便利になることをあわせて案内してきました。カードを持つ人が増えた現在は、内容を新しくしたA3判のリーフレットを社内に展開しています。

こうした取組により、活用は着実に広がっています。住所・氏名変更を自動で反映またはご案内するサービスの利用者は約35万人、年金の自動支払サービスは約4万件、マイナポータルから健康診断結果を提出する仕組みは約1万9,000件利用されています(いずれも2026年3月時点の累計)。

同社が見据えるのは、さらに先の活用です。マイナポータルを活用し、保険の加入時における手続の高度化や、給付金等の請求漏れが発生しないような仕組みを構築すること。さらには、行政手続をすると保険の手続もまとめて完了する「ワンストップ手続」の実現です。

「マイナンバーカードとマイナポータルの活用は、これから当たり前になっていく。社内でも、そうした認識が共有されています」(小谷氏)

ATMから広がる、暮らしに寄り添うサービスプラットフォーム(株式会社セブン銀行)

株式会社セブン銀行の三浦龍矢氏がマイクを持って登壇している様子。三浦氏の右側にはスクリーンがあり、「マイナンバーカードを活用した認証サービス」と題したスライドが映し出されている。話を聞いている参加者の後頭部が3人ほど確認できる。
(写真キャプション:登壇する株式会社セブン銀行の三浦龍矢氏)

株式会社セブン銀行の三浦龍矢氏(ATM+企画部グループ長)は、ATMを通じたマイナンバーカードの活用について紹介しました。

マイナンバーカード活用を支えるATMプラットフォーム

「誰一人取り残されない特徴」と題したスライド。「『ATM+(プラス)』は、“誰一人取り残されない社会の実現”という理念のもと、さまざまな機能を搭載」とスライド上部に書かれている。中央には『ATM+』の写真が書かれていて、そこから4つの線が引かれて、説明が書かれている。特徴1画面デザイン:大きな画面・文字で、見やすさを向上。ハードウェア・画面UIはカラーユニバーサルデザイン認証を取得。特徴2多彩な機能:QRコードの読み取りが可能な機能も搭載。Plusエリア、QRコード、本人確認書類の読取、券面画像、IC読取、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード。特徴3ATMコールセンター:24時間365日対応。日本語・英語対応。オペレーターがATMの画面を見ながら、操作に不慣れな方でも操作できるように音声で詳細に案内。特徴4使い心地のよさ:操作パネルを低い位置に設定し、広めのスペースを確保。荷物置き・つえ置きなども備え付け、ストレスなくATMを利用できる環境。
(ATMをマイナンバーカードの手続に活用/株式会社セブン銀行)

セブン銀行では、ATMをマイナンバーカードの手続にも活用しています。その基盤となるのが、全国に広がるATM網です。現在の設置台数は約2万8,000台で、今後4年ほどかけて約4万4,000台まで広げる予定です。設置場所はコンビニだけでなく、駅や空港、商業施設などにも及びます。

「ATMは現金を引き出す場所というイメージがあるかもしれませんが、いまは暮らしに身近なサービスを提供する場へと進化しています」(三浦氏)

セブン銀行がマイナンバーカードに関わり始めたのは、2020年のマイナポイントの申込対応でした。以来、活用の幅を段階的に広げてきました。

提供するマイナンバーカード関連サービス

「マイナポータル情報連携サービス」と題したスライド。スライド上部に「各社サービスの手続きで必要になる年収情報(自己情報)の提出をATMで提出。自治体保有の情報を直接データで連携し、手間・不備、偽造・改ざんを抑え、デジタル化に貢献」と書かれている。スライド中央〜下部にかけては図が書かれている。従来は、事業者から年収情報の提出依頼をされたお客さまが、自治体に書類発行依頼・書類発行をし、PC・スマホや郵便を通じて提出していた。書類取得のうえ、PC等の操作が必要だったり、書類取得・提出が手間、不備発生があったりした。自治体側としても依頼内容の確認や発行手続きが手間だった。一方、本サービスは、事業者から年収情報の提出依頼をされたお客さまが、マイナンバーカードを使って、ATM+を通じて手続きをすると、マイナポータルAPIで、デジタル庁マイナポータル、そして自己情報(年収情報)にアクセスでき、データを提出できる仕組み。必要な情報を直接データで連携、不備・偽造/改ざんのリスクを抑える。
(マイナポータルと連携した情報連携サービス/株式会社セブン銀行)

セブン銀行のATMには、マイナンバーカードを読み取る機能が備わっており、これを使ったサービスが提供されています。

一つが、健康保険証利用の申込です。マイナンバーカードを健康保険証として使うには、事前の登録が必要になります。パソコンやスマートフォンから申し込む場合は、カードの読み取り機器やアプリが必要ですが、セブン銀行のATMなら、マイナンバーカードを持参し、暗証番号を入力して申し込めます。

「利用者がアプリなどを準備する必要がないだけでなく、自治体や医療機関の窓口の負担軽減にもつながっていると考えています」(三浦氏)

各種の手続に必要な所得情報などをATMから事業者へ直接データで届けるマイナポータル情報連携サービスも提供しています。従来は利用者が自治体などから所得証明書を取得し、事業者に提出する必要がありましたが、このサービスでは利用者の同意のもと、マイナポータルを経由して、自治体が保有する所得情報を事業者へ直接連携することができます。

「書類の取得や提出の手間がなくなるうえ、記入漏れや偽造・改ざんのリスクも抑えられます。利用した事業者からは、『正確な情報を受け取れる』『作業の工数が減った』といった声をいただいています」(三浦氏)

ATMを活用した、これからの取組

「マイナンバーカードを活用した認証サービス」と題したスライド。スライド上部に「eKYC(ICチップ読取・JPKI等の本人確認)でATMチャネルでの本人確認手続きを提供。ユーザーに選択肢のある世界を構築」とある。スライド中央〜下部に図が描かれている。「ユーザー」から矢印が伸びていて、そこに「申請」と書かれている。矢印の先には「事業者」とあり、「アカウント登録、サービス申込、取引時確認」と書かれている。そこから「LIQUID eKYC」の箱に矢印が伸びている。その箱の中には「eKYC用画面」と書かれていて、そこから「スマホで本人確認」→「本人確認結果」と矢印がつながっている。「eKYC用画面」からはもう一つ矢印が出ていて「ATMで本人確認」「QRコード生成」と書かれている。「操作がわからない/ICチップをうまく読み取れない/端末が非対応」と書かれた横に「スマホのICチップ読取方式では申請完了前の離脱が一定数発生(2026年7月現在、Androidにおいて、約6%の機種でIC読み取りエラーが発生。全IC読み取り過程での離脱率は1割程度。また、在留外国人の場合、日本での流通が少ない機種の保有率が高いためか、保有している機種の約3割でIC読取エラーが発生している(Liquid社調べ)」とある。「LIQUID eKYC」の箱からは矢印が続いており「事業者」の箱へ矢印が続く。「本人確認結果」→「申請完了」と書かれている。
(eKYCとATMを組み合わせた本人確認を検討/株式会社セブン銀行)

セブン銀行は、ATMを使った本人確認の仕組みづくりにも取り組んでいます。スマートフォンによるオンライン本人確認が広がるなか、ATMという身近な拠点でも同様の手続ができるようにすることで、より多くの人が利用しやすい環境を整える狙いです。

具体的には、eKYCサービスで生成したQRコードをATMで読み取り、続けてマイナンバーカードを読み取ることで本人確認を進める仕組みを検討しています。スマートフォンとATM、それぞれの特性を生かした選択肢を用意することで、利用者が自分に合った方法で手続を完了できるようにする考えです。

「ウェブやアプリを置き換えるのではなく、ATMという新たな選択肢のある世界を構築していきたいと考えています」(三浦氏)

口座開設だけじゃない!不正取引対策でのマイナンバーカードの活用法(マネックス証券株式会社)

マネックス証券株式会社の法貴大輔氏がマイクを持って登壇している様子。法貴氏の右側にはスクリーンがあり、当日の資料の一部が投影されている。
(写真キャプション:登壇するマネックス証券株式会社の法貴大輔氏)

マネックス証券株式会社の法貴大輔氏(システム開発一部 第一プロダクトグループ 認証チーム・チームリーダー)は、不正取引対策としてのマイナンバーカードの活用について紹介しました。同社では口座開設時の本人確認に加え、2026年から新たな場面での活用を始めています。

深刻化する不正取引

「証券口座の不正アクセス被害状況」と題したスライド。横軸に2025年1月〜2026年7月まで、縦軸に0件〜6000件、0円〜3000億円の数値が書かれている。
(証券口座の不正アクセスは2025年4月にピークを迎えた/マネックス証券株式会社)

証券業界では近年、第三者が他人の口座に不正にアクセスし、勝手に取引を行う被害が問題となってきました。法貴氏は、金融庁のデータを示しながら、その深刻さを説明しました。

「ピークだった2025年4月には、6,000件近い不正アクセスが検知され、そのうち約3,000件が実際の不正な取引にまで至りました。金額としても、非常に大きな被害が発生しています」(法貴氏)

業界全体で対策が進み、状況は落ち着いてきています。しかし、警戒を続ける必要性を法貴氏は強調します。

「生成AIを使えばフィッシングサイトも簡単につくれてしまう時代です。攻撃者側もそれを使えるため、対策を常にアップデートし続けなければなりません」(法貴氏)

対策の要となった「パスキー」

「マネックス証券が実施した対策(一部)」と書かれたスライド。①ワンタイムパスワードの必須化:認証アプリ等を用いたワンタイムパスワード(OTP)の入力を必須化しました。②取引の一時的な停止機能:不審なアクセスを検知した場合や、お客様自身がリスクを感じた際に、即座にオンラインでの取引を一時停止できる機能を提供しました。③パスキー認証の導入:パスワードレスでより安全かつ利便性の高いFIDO認証(パスキー)を導入し、フィッシング耐性の高い認証手段を提供しています。
(実施した不正取引対策(一部)/マネックス証券株式会社)

こうしたなか、同社はいくつかの対策を重ねてきました。ログイン時などにワンタイムパスワードの入力を必須にしたほか、利用者が不安を感じたときに取引を一時停止できる機能も設けています。

なかでも鍵となったのが、パスワードに代わる新しい認証の仕組み「パスキー」の導入です。パスキーは、仮に偽のサイトへ誘導されても認証が成立しないため、フィッシングに強いことが特徴です。

ただし、弱点もありました。登録さえ済めば安全に使えますが、その「登録するとき」の本人確認が弱いと、攻撃者に不正にパスキーを登録されてしまうおそれがあったのです。

「パスキーだけでは、足りないピースがありました。それが、登録するときの本人確認です」(法貴氏)

マイナンバーカードを活用した本人確認の強化

「パスキーだけでは足りないピース」と書かれたスライド。「登録時の本人確認」とサブタイトルがあり、以下に「パスキーはフィッシング攻撃に強く、安全な認証手段です。しかし、「パスキーを登録する瞬間」の本人確認が弱ければ、悪意ある第三者にパスキーを登録されてしまうリスクが残ります。この足りないピースを埋めるため、私たちはデジタル認証アプリ=マイナアプリの認証APIを用いた属性情報取得に注目しました。これにより、厳格な本人確認をオンラインで提供いたしております。」と続く。スライドの横には、デジタル庁開発サイトから引用した利用者/ブラウザ/RP/デジタル認証アプリサービスの図がある。
(パスキー登録時の本人確認にデジタル認証アプリ (※) を取り入れた仕組み/マネックス証券株式会社)

この弱点を補うために活用したのが、マイナンバーカードでした。同社は、パスキーを登録する際の本人確認に、デジタル庁のデジタル認証アプリ (※) のAPIを取り入れました。

(※) デジタル認証アプリはマイナアプリに統合されました。これに伴い、デジタル認証アプリサービスは「デジタル認証サービス」へ呼称を変更しました。行政機関や民間事業者の方は、デジタル認証サービスを引き続きご活用いただけます。

同社が利点と感じた点は二つあると法貴氏は話します。一つは、利用者のスマートフォンにすでに入っている「マイナアプリ」で認証できること。多くの人がすでに利用しているアプリのため、あらためて別のアプリを用意する必要がありません。もう一つは、APIの設計が新しく、金融機関に求められる高い安全性に配慮されている点です。

今後は、出金先口座の変更やオンラインでのアカウント復旧など、より慎重な本人確認が求められる手続にも活用を広げることを検討しています。

「口座開設にとどまらず、日常的な場面でもマイナンバーカードを使えるようにしていきたいと考えています」(法貴氏)

業界を越えて、マイナンバーカード活用のヒントを共有

ワークショップの様子の写真。写真の右奥に、ワークショップで作成した模造紙を掲げている人が2人いる。その左横にマイクを持って話す参加者がいる。それを聞く参加者がの後頭部が12人ほど見える。
(ワークショップの様子)

3社の発表に続いて、トークセッションと質疑応答、参加者によるワークショップに移りました。業界の垣根を越えて、活発な意見が交わされました。

質疑応答では、多くの企業に共通する関心事が話題に上りました。

「社内でマイナンバーカードの活用を進めるうえで経営層の理解をどう得るか」という問いに対して、明治安田の小谷氏は「サービスを使ったお客さまの『便利だ』という声を伝えることが、後押しになる」と回答。マネックス証券の法貴氏は、「コストの削減につながるなど、具体的な効果を示すことも一つの方法」とコメントしました。

デジタルに不慣れな高齢の利用者への対応も話題に。小谷氏は営業・事務職員による対面のサポートに加え、分かりやすいリーフレットや動画教材を用意していることを紹介しました。

ワークショップでは、参加者がグループに分かれ、「マイナンバーカードの使い倒しアイデア」を出し合いました。

例えば、次のようなアイデアです。

  • 高齢者の入退院や老人ホームへの入居に伴う手続を、マイナンバーカードで簡素化する
  • 親から子へ、アカウントやデジタル資産を引き継ぐ
  • 病院ごとに分かれている医療情報を連携し、受診後にスムーズに保険金を受け取れるようにする

業界の異なる参加者が知恵を持ち寄り、暮らしの課題を解決する多彩な発想が生まれました。

なお、当日のイベントの内容はグラフィックレコーディングでも記録されました。3社の事例から官民連携まで、この日の学びを一枚にまとめています。

マイナンバーカード友の会ミートアップ!!のグラフィックコード。1枚目。「事例を学び、対話で深め、つながりをつくる場」、「マイナンバーカードのいま。カード保有数1億枚突破!!スマホ搭載も増加中!!」→「これからはマイナンバーカードを使い倒す!!」という表記がスマホやマイナンバーカードのイラストともに書かれている。そして「国民の利用」「利活用シーン」「導入事業者」の3つが三角形の周りに描かれており、「官民で好循環をつくっていく」とも書かれている。「先進3社の事例共有」と書かれているところは3つに分かれている。明治安田生命保険相互会社 小谷修一様のパートでは似顔絵と共に「マイナンバーカードと共に歩むライフイベント」「活用意義:保障を確実に届ける、負担減、デジタル化貢献」「今後:加入時の高度化/給付時の請求レス化/ワンストップ手続き」とある。株式会社セブン銀行 三浦龍矢様のパートでは似顔絵と共に「ATMから広がるくらしによりそうプラットフォーム」とある。ATMの絵の横に「4.4万台」「マイナンバーカード関連サービス多数!!」「ATMで、誰ひとりデジタルから取り残さない!」と書かれている。マネックス証券株式会社 法貴大輔様のパートでは似顔絵とともに「口座開設だけじゃない!不正取引対策としての活用法」「不正アクセス多発...→対策:OPT、パスキーetc.→マイナンバーカードで強化!=デジタル認証サービスの本人確認」「今後も活用範囲を広げる」と書かれている。3社の中心には「官民連携&共創」と黄色く大きく囲まれた文字も見える。
(グラフィックレコーディング:「マイナンバーカード友の会ミートアップ!!」当日の記録/デジタル庁)

おわりに:活用を検討する事業者の皆さまへ

イベントに参加した方々や登壇者が笑顔で写真に写っている全員集合写真。
(イベント参加者の集合写真)

デジタル庁は、マイナンバーカードの活用を検討する事業者の皆さま向けに各種情報を公開しています。

政府の取組方針やカードの機能など基本情報をまとめた資料のほか、本人確認を行う公的個人認証サービス(JPKI)の技術情報、すでに導入した事業者の事例一覧などを確認できます。また、自社に近い業種の取組を探すことも可能です。詳しくは、デジタル庁ウェブサイト「民間事業者向けマイナンバーカード活用情報」をご覧ください。

デジタル庁では、今回のイベントをきっかけに、マイナンバーカードを活用した新たなサービスや取組の検討が広がり、業界を越えた連携が生まれることを期待しています。

マイナンバーカードの利活用に関心のある自治体・民間事業者の皆さまは、ぜひ「マイナンバーカード友の会」にご加入ください。

●「マイナンバーカード友の会」加入に関する詳細は、以下のリンクをご確認ください。

●関連情報

●デジタル庁ニュースの最新記事は、以下のリンクからご覧ください。