特急列車でデジタル支援、JR東日本のデジタル推進委員が実践する「デジタルよろず相談所」
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特急列車に乗りながら、デジタルの悩みを気軽に相談できたら――。そんな環境づくりに取り組んでいるのが「デジタル推進委員」として活動するJR東日本高崎支社前橋統括センターの乗務員たちです。
デジタル推進委員とは、デジタル機器やサービスに不慣れな方の身近な相談相手として、誰一人取り残されないデジタル社会の実現を目指す取組です。これまでに約5万9,383人の方々が任命されており、JR東日本グループでも2,500人以上のデジタル推進委員が任命されています。(2026年3月末時点)
JR東日本では2023年4月から各駅で「デジタルよろず相談所」を開設し、マイナンバーカードやマイナポータルの利用方法の案内、自社サービスに関する説明などに取り組んできました。中でも前橋統括センターでは、このような取組を特急草津・四万(くさつ・しま)の車内にまで広げるユニークな試みを進めています。
普段は運転士や車掌として勤務している乗務員たちは、どのようにお客さまのデジタルに関する困りごとに寄り添っているのでしょうか。前橋統括センター乗務ユニットの寺嶋彩乃氏と生方聡氏に話を聞きました。
乗務員ならではの発想から生まれた、車内でのデジタル支援

(生方聡氏)
――「デジタルよろず相談所」を特急の車内で実施することになったきっかけを教えてください。
生方:
きっかけは、私たちの職場で組織再編があり、地域づくりに携わる「地域共創ユニット、地域連携グループ」が2024年度に生まれたことでした。これまでの主な活動としては、地域のお子さまに電車の乗り方を教える「乗り方教室」や、今回ご紹介する「デジタルよろず相談所」などが挙げられます。
デジタルよろず相談所については、これまで基本的に駅で開催していましたが、乗務員としても何かできないかという思いから、列車内でできることを検討しました。
特急草津・四万号は上野~長野原草津口間を走る特急列車で、普通列車と比べて停車駅が少なく、駅間が長いのが特徴です。移動中のお客さまに対してこの特性を活かした乗務員ならではの取組ができるのではないかという発想から、特急車内でのデジタルよろず相談所の取組が生まれました。
加えて、特急列車にご乗車のお客さまがJR東日本のインターネット予約サービス「えきねっと」を通じたチケットレスサービスをご利用されているか、そもそも「えきねっと」にご登録されているかといった点も気になっており、このような背景から試験的な実施に至りました。
――特急草津・四万での「デジタルよろず相談所」は、どのような組織体制で運営されていますか。
寺嶋:
私たち地域連携グループはグループリーダー1名、一般社員10名を中心に活動しています。2025年度からは前橋統括センターの駅の社員とも連携して取り組んでいるため、全体で20名弱の規模で活動しています。
車内放送からお声がけまで、移動中に寄り添う乗務員

(特急草津・四万で実施した「デジタルよろず相談所」の様子/提供:JR東日本)
――実際の特急車内でのデジタルよろず相談所の具体的な流れを教えてください。
生方:
実施にあたってはデジタル推進委員向けの動画でデジタル知識の基礎を学ぶとともに、自社のデジタルサービスについての勉強会も開催しました。普段は乗務員として勤務しているため、乗務の知識を活かしながら、デジタルサービスについての理解をさらに深めることで、お客さまにより充実したご案内ができるよう準備を整えました。
特急草津・四万は5両編成のため、3〜6名で実施し、各車両を1〜2名でご案内しています。どの区間で活動するかはメンバーで事前に相談した上で乗車し、車内放送でデジタルサービスに関する相談会を実施していることや、えきねっとやJRE POINTへの登録のご案内をした後、お客さまにお声がけしています。
車内放送は日頃から行っている業務であるため、お客さまに伝えたい情報が伝わるよう、分かりやすく簡潔なものを意識して作りました。放送の中では、JR東日本のデジタルサービスのご利用方法・マイナポータルの活用方法などの相談会を関東の各地でも実施していることをお伝えしました。
車内放送でマイナポータルに関する内容を含めたのは、当社が推進に携わっている「GunMaaS」(グンマース:群馬県新モビリティサービス推進協議会が提供する県内のバス・タクシー・鉄道などの交通手段やチケットの予約・購入・利用ができるサービス)との連携もご紹介できればと考えたからです。
特急草津・四万のお客さまの多くが草津温泉に向かわれますが、終点の長野原草津口駅を発着するバスでもGunMaaSを利用できます。また、群馬県内の特定の地域にお住まいの方は、GunMaaSをマイナンバーカードと連携することで、その地域にお住まいの方向けの交通助成サービスをご利用いただけます。県外からお越しの方には、群馬県を訪れていただいた際にお得に群馬県内を周遊できるチケットの販売もしており、地域振興にもつながればと考えました。
――地域振興にもつながる取組ですね。デジタルよろず相談所を実施する際に工夫したポイントもあわせて教えてください。
寺嶋:
長野原草津口方面に向かうお客さまは観光に行かれる方が多く、旅の期待感もあり、お声がけしやすい雰囲気でした。一方、上野方面に向かうお客さまは旅行帰りの方が多く、休まれたい方もいらっしゃるため、声がけのタイミングに配慮しました。
生方:
私は日頃この区間で運転士として乗務しているため、お客さまがデジタルサービスの登録をされている間に、その経験を生かした会話のきっかけを作るよう心がけました。
例えば、お客さまがJR東日本のJRE POINTに登録するのに少しお時間がかかっているときに、「この先カーブ制限があり、速度を落として運行します」などとお伝えすると、「知らなかった」と喜んでいただけることがありました。
寺嶋:
夏休み期間にデジタルよろず相談所を実施した際は、お子さまも多くいらっしゃることから、シールなどのノベルティを声かけのきっかけとして活用しました。
当初は新規登録された方へご提供していたのですが、すでにデジタルサービスに登録されているお客さまにも、さらに活用を深めていただけるよう、キャンペーンへのご案内とあわせてノベルティをお渡しするようにしました。
――実際に寄せられた相談で、印象に残っているものはありますか。
寺嶋:
自社サービスに関するご相談が多い中で、その過程で「自分のメールアドレスが分からない」「パスワードを忘れた」といったスマートフォンの操作に関わるご相談が寄せられたこともありました。そのような場合でも、駅間が長く時間に余裕があるため、お客さまのペースに合わせてじっくり対応できるのも、車内相談会ならではの強みだと感じています。
また、「JRE POINTの存在は知っているが使ったことがない」「大人の休日倶楽部のクレジットカードを持っているがポイントの確認方法が分からない」といった声が特にシニアのお客さまに多く見られました。そのようなデジタルサービスをこれから活用したい方や、さらに使いこなしたい方などに一つひとつ丁寧にご説明し、感謝の言葉をいただいたことが印象に残っています。
特急列車だから届けられる、200人へのデジタル支援

(寺嶋彩乃氏)
――移動中に気軽にデジタルの相談ができる環境を整えたことで、どのような効果を感じていますか。
寺嶋:
車内で相談会を実施することで、お客さまにこちらからお声がけをしてデジタルサービスをご案内する機会を創出できたことに、大きな意義を感じています。
特急列車なら全員に声をかけることで200人ほどのお客さまにご案内できるため、より多くのお客さまにデジタルサービスをお届けできると考えています。駅での相談会と組み合わせることで、より幅広いお客さまにデジタルサービスをご案内できる機会が広がっていると思います。
また、普段の乗務業務とは別にこのような活動に取り組んでいますが、短い時間で効率的に多くのお客さまにご案内ができることも、車内相談会ならではのメリットだと感じています。
生方:
この取組は2024年度に計3回、2025年度に計3回、合計6回実施しています。今後も継続的に取り組んでいきたいと考えています。より多くのお客さまに快適にご利用いただける時期を選んで実施するため、輸送実績データを基に適切な時期に実施する方針です。
駅と車内を組み合わせ、地域のデジタル活用に貢献

――今後、同様の取組を横展開される予定や可能性、今回培ったノウハウをどのように活かしていきたいかなどを教えてください。
生方:
今後は、お客さまの利用状況やニーズに合わせて、より一人ひとりに寄り添ったデジタルサービスのご案内ができるよう努めていきたいと考えています。
デジタルに不慣れなお客さまにはログインから使い方まで丁寧にご説明し、継続的にご利用いただけるよう支援していきます。また、すでにデジタルサービスをご活用されているお客さまには、さらに便利にご活用いただけるようご案内に努めてまいります。
寺嶋:
水平展開に関しては、他の支社内で車内相談会を実施する例があると聞いています。私たちも、毎回明確な課題や目的を持って取り組んでいきたいと考えています。
また、長野原草津口駅ではバスから列車への乗り換え待ち時間があります。今後は、その時間を活用して駅でも相談会を開催するなど、駅と車内を組み合わせたハイブリッドな形での展開も検討できればと思います。
――最後に、一連の「デジタルよろず相談所」の取組を通じて実現したいことや目指している姿がありましたら教えてください。
生方:
一つひとつは地道な取組ですが、毎回5〜10名ほどのお客さまにデジタルサービスの使い方をご理解いただいています。スマートフォンなどを通じてデジタルサービスを活用いただくことで、お客さまの旅行や移動がより便利になれば、草津温泉や四万温泉などへの旅行機会も増えていくと考えています。そのような積み重ねが、観光振興や地方創生にもつながっていければと考えています。
寺嶋:
継続的に取り組んでいくことで、お客さまにスマートフォンやデジタルサービスなどを活用いただき、さらにはGunMaaSなど地域のサービスとも連携しながら、鉄道を中心としたシームレスなサービス運用に貢献できればと考えています。
●デジタル庁では、デジタル機器やサービスに不慣れな方へのサポートに役立つデジタル情報をまとめたページ「教える人のためのデジタル情報ひろば」をご用意しています。
デジタル推進委員をはじめ、住民の方へご説明いただく際などにぜひご活用ください。
- 教える人のためのデジタル情報ひろば|デジタル庁(※外部リンク)
●デジタル庁ニュースでは、各地で活動するデジタル推進委員の取組を紹介しています。過去のコンテンツは以下のリンクをご覧ください。
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